研究課題/領域番号 |
21K00063
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
ダヴァン ディディエ 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (90783291)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大燈国師 / 密参禅 / 臨済宗 / 養叟宗頤 / 公案 |
研究実績の概要 |
本年も続いた新型コロナウイルス感染防止対策のため、調査が思い通りに行われなかった。従って、主な研究は翻刻されているテキストの分析に変更せざるを得なかった。この作業の主な結果はいかのようである。 - 大燈派の思想かつ実践的な特徴は後に「密参禅」と呼ばれる方法にあるが、室町時代後期に始まったと思われていた実践法は大燈の時代に既に存在していた。同時代を生きた虎関師錬(1278-1346)の『十禅支録』にその描写を発見した。つまり、大燈派の独特な禅で近世に禅宗全体に広まった「密参禅」の起源は今まで考えられていたより2世紀ほど早い時代に存在していたという事になる。 - 室町後半に養叟によって広まった大燈派の実践法は、既存の伝統を引き継いでいたと思われるようになった。特に、大燈が作成した公案集そして、公案集に対する態勢(下語の使用、弟子の接し方など)は大燈本人の時代にあったという可能性が高いと分かった。 - 養叟は単に大燈派を受け継いだだけではなく、当時の状況(社会の変更など)により幾つかの根本的な点に実践法を変えた。 以上の結果を発表と論文の形で発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
禅籍の調査を中心としていた本来の計画を変更して、調査より分析の作業がメインとなり、その分析で気づいた事の発表が主な活動になった。今までの主な成果は次のようである: -所謂「大燈派」は大燈国師(宗峰妙超、1282-1338)を開祖にしながら、独自の思想的や実践的な特徴が確認できる資料は室町後期までしか遡れないと思われていた。特に、養叟宗頤(1376-1458)が堺の在家などに提供した新しい善のアプローチが「大燈派」とされている思想的な特徴の起源であろうと思われていた。しかし、一休宗純(1394-1485)の『自戒集』の分析や虎関師錬の『十禅支録』に発見した記述に基づけば、大燈の時代まで遡れる可能性が出てきた。 -大燈国師が作成した公案集の意義を見直す必要があると分かった。後に「密参禅」と呼ばれている実践法は公案集に基づいているが、大燈が編纂した『大燈百二十則』の現存する写本に「密参禅」の要素が確認できた。(ただし、実物の調査は出来ていないため、翻刻による) -大燈禅に『碧巌録』が重視されていて、彼に作成された公案集と下語はそれをモデルにしていると考えるようになった。 以上の三点はすでに講演と論文で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本来の計画は大燈国師関連の禅籍を幅広く検討する事であったが、新型コロナウイルスに伴った制限によって、その時間がなくなった。しかし、代わりに行った様々な分析作業の結果を生かして、今後の調査を以下の点に絞りたい。 -大燈国師自身が作成した公案集 -大燈から養叟までの大燈派の碧巌録の注釈。 -大燈から養叟までの禅籍に「密参禅」の発端を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査がまだ不可能であったため。
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