研究課題/領域番号 |
21K00078
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
田中 悟 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (90526055)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 現代韓国 / 現代日本 / 死者 / 慰霊 / 追悼 / 継承 / 公的機関 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦争や内戦、大規模災害などにおいて傷つき、あるいは亡くなった者に対して、後世代の人々はどのように関わることができるか、という点に着目する。とりわけ、死者慰霊の継承という点に注目し、国家その他の公的存在が果たし得る役割とその可能性について、実証と理論の両面で分析と考察を行なうことを目指すものである。なお、具体的な研究項目は、(1) 現代韓国社会における「死者慰霊の継承が問題となっている事例」の実態把握、(2) 近現代日本の事例との比較を含む政治学的・宗教学的考察、(3)「公的な主体による慰霊行為の継承が成立するための条件」の検討と、その成立可能性の考究、という3点である。 上記3項目のうち、(1)については、本年度のフィールドワークおよび資料調査(夏期および冬期に韓国で実施を予定であった)が、昨年度より続く新型コロナウイルス感染症の世界的流行にともなう出入国制限によって、計画通りに行なうことは叶わなかった。そのため、手持ちの既収集資料やウェブ情報を駆使して取りまとめた事例研究の成果について、その一端を日本宗教学会において報告した。また、(2)については、国内旅行にも強い制限がかかる中でやはり調査の進行に困難な状況が続いているが、主に京阪神圏の公営墓地における無縁墓を中心とした現地調査を進めている。(3)については、(1)の成果に関連して行政学における中央‐地方関係に関する知見を参照し、考察を進めているところである。 以上、研究1年目に当たる本年度は、新型コロナウイルス禍の影響を少なからず受けながらも、過去の事例を紐解きつつ、韓国および日本の経験をケースとした検証と考察を進めることができたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度については、新型コロナウイルス感染症の影響で、フィールドワークの予定の大部分を実行することができなかった点、率直に言って研究遂行に大きな影響が及んでいる。これらの計画については、状況の推移をにらみつつ、次年度において順次実施していく予定である。また、仮に各予定が実施できなかった場合については、その時々の状況下で可能な範囲において研究成果を公表していくものとし、シミュレーションを行なっている。 以上の理由から、現在までの達成度は「やや遅れている」と評価するのが妥当であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の対象である現代韓国の「公的な死者をめぐる継承困難な事例」は、現在進行形で形成されているダイナミックな事象であるため、継続的なフィールドワーク、および資料・情報の収集と内容の更新が必須なところである。しかし、現在もなお、新型コロナウイルスの影響で、韓国渡航が可能となる目途は立っておらず、現地調査の実施は本年度も引き続き極めて困難なことが予想される情勢である。 そのため今後は、フィールドワークや現地調査の可能性を引き続き探りつつも、韓国の事例については主として日本において入手できる情報の範囲で研究を進めるものとし、日本国内における情報収集活動、およびこれまでの調査を基にした考察を取りまとめ、研究成果として公表することに力点を置いた活動を遂行するものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最大の理由は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を受けて、国外旅費(フィールドワーク)が使用できなかったことである。また、国内学会・研究会も大半がオンライン化され、国内での調査すら難しい状況が長く続いたことの影響も受けた。そのような状況の中で、前年度に繰り越した科学研究費の使用を優先したため、本科学研究費の本年度使用については大きな次年度使用額が生じることとなった。 次年度も大きな状況の変化は見込めないものと考えられるため、フィールドワークや現地調査の可能性を継続的に探りながらも、現状の調査資料に基づいた成果公表の準備を進めているところであり、もって社会への成果還元の責務を果たす予定である。
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