研究課題/領域番号 |
21K00085
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
小林 春夫 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70242229)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | イスラーム哲学 / シャハラズーリー / 比喩と象徴 |
研究実績の概要 |
(1)シャハラズーリー『比喩と象徴』テキストの校訂については、新規に獲得したイラン写本(MS. Tunikabuni 39. cf. Dina, Fihristwarah-i dastniwishtha-yi Iran, ed. Mustafa Dirayati, Teheran 1389 AHS, vol. 5, 912, no. 139880)とこれまでに試作したテキストとの校合をすすめた。また、テキスト読解にかかわる関連文献の調査と収集をすすめた。 (2)後期イスラーム哲学の通史的研究については、平成28年度から継続中の科学研究費基盤研究(C)「イブン・スィーナー『治癒の書』に関する比較思想史的研究(3)」(16K02201)を引き継ぐ形で、令和3年5月22日、6月12日、6月26日、7月10日、8月7日、8月21日、10月9日、11月20日、12月18日、令和4年1月22日、3月5日、3月28日の計12回、午後2時より6時までのオンライン研究会を開催した。研究会の主な内容はThe Cambridge Companion to Arabic Philosophy, ed. P. Adamson and R. Taylor, 2005の訳読であるが、翻訳を分担したイスラーム思想史の専門家(常時数名が参加)がそれぞれの分野の知見を交換する貴重な機会となっている。その中で、本科研の主題であるシャハラズーリーの思想解明に直結するテーマも取り上げられた。 また本科研に関連して、イスラーム哲学の最近の研究動向と研究展望について、「イスラーム哲学史の再考」(東京大学中東地域研究センター中東セミナー「中東と遺産:文化・歴史・信仰の展開」第 7 回、2021 年 10 月 13 日)において口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は新型コロナ感染症蔓延のため予定していた海外での調査研究が実施できず、また国内における対面での研究会等も中止を余儀なくされた。このため主な研究活動は、(1)個人によるテキスト『比喩と象徴』の校訂と分析、(2)オンラインによる研究会の開催、関連する図書資料の収集であった。 (1)「研究実績の概要」で述べた通り、本年度は新規に獲得したイラン写本(Tunikabuni 39. cf. Dina, Fihristwarah-i dastniwishtha-yi Iran, ed. Mustafa Dirayati, Teheran 1389 AHS, vol. 5, 912, no. 139880)とこれまでに試作したテキストとの校合をすすめた。その結果、同写本はこれまでに調査した写本のうちMS. Nuruosmaniye 2263に次ぐ古写本であり、その正確性と保存状態から校訂版の完成に欠かせない資料であることが判明した。さらなる写本調査と関連資料の収集とともに、校訂作業を継続したい。 (2)後期イスラーム哲学の通史的研究に関連しては、上記の訳読研究会(The Cambridge Companion to Arabic Philosophy, ed. P. Adamson and R. Taylor, 2005)により、イスラーム思想史の専門家と貴重な情報交換を行うことができた。その中で、本科研の主題であるシャハラズーリーの思想解明に直結するテーマを取り上げた。さらに、本科研の成果の一部を上記のセミナー(東京大学中東地域研究センター中東セミナー「中東と遺産:文化・歴史・信仰の展開」第 7 回、2021 年 10 月 13 日)において発表し、参加者との意見交換をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、これまでの研究内容を継続するとともに、海外での現地調査をぜひとも再開したい。その際には、イスタンブル、カイロ、テヘランの図書館や研究所を訪問し写本調査をおこなうとともに、現地専門家との情報交換、関連資料の収取にあたりたい。また後期イスラーム哲学の歴史的解明にあたっては、近年世界各地で出版されている原典および研究文献の調査収集をおこない、その成果の吸収に努めたい。以上を踏まえて、研究成果を論文や口頭発表のかたちで発信していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大により海外調査を取りやめたため。令和4年度にまとめて実施する予定である。
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