研究課題/領域番号 |
21K00087
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石黒 盛久 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50311030)
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研究分担者 |
厚見 恵一郎 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00257239)
鹿子生 浩輝 東北大学, 法学研究科, 教授 (10336042)
村田 玲 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (20507892)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マキアヴェッリ / ルネサンス / 政治思想 / 終末論的予言 / フィレンツェ / 政治文化 / サヴォナローラ |
研究実績の概要 |
まず共同研究事業として、2021年7月2日(プレミーティング)、9月15日(定森亮氏の近著をめぐる本ミーティング)、2022年2月27日(本ミーティング 研究分担者村田氏の翻訳業績の論評会及び研究協力者村木数鷹氏によるイタリアにおける近年のマキアヴェッリ研究の状況についての報告)を実施した。 個別の業績としては以下の通り。研究代表である石黒盛久は、その思想形成上の転換点である1513年から1514年のかけての時期のマキアヴェッリの2通の書簡の翻訳・注解を行った。これらの書簡の記述には彼のキリスト教観や予言的説教師の活動に対する感想も含まれており、本研究にとっても有益な資料と言えよう。また喜田いくみとの共著として、イタリア・ルネサンス研究の世界的大家アリソン・ブラウンの著作The Renaissanceを『イタリア・ルネサンスの世界』の邦題のもと刊行した。 研究分担者の鹿子生浩輝は昨年度の活動の一端として、共同研究会での講演を招聘した定森亮氏の近年の著作についての長文の書評を公にしている。そこでの主題はマキアヴェッリとそれに続く世代の思想家モンテスキューの政治思想の、共通性と相違性の析出であるが、そこには当然この両思想家間の政治と宗教の関係についての考察も含まれている。同じく研究分担者の村田玲は、マキアヴェッリ解釈史において重要な地位を占める政治思想史家L・シュトラウスが自身の宗教観を開陳した重要な論考の翻訳を行った。それは当然彼によるマキアヴェッリの宗教観解釈にも多大な影響を与えるものであり、マキアヴェッリ政治思想における宗教の意義を考える本研究を進めていくにあたり、重要な成果であったと言えよう。 なお本研究の研究協力者として村木数鷹・横尾祐樹両氏の参画を得た。村木氏は『日伊文化研究』、横尾氏は『政治思想研究』『年報政治学』に本共同研究にかかわる優れた論考を掲載している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
引き続きコロナ禍の影響で、国内での対面による研究打ち合わせの実施や、海外における資料・史料収集活動や研究連携活動の遂行が阻まれているのが最大の原因である。遠隔会議システムの活用により、事態の克服を図ったが、メンバーが未だこうした機器の有効な利用法に習熟していないため、十分な効果を上げるに至らなかった。 各自本務校を有する教育者として、まずは遠隔対応の授業準備に注力せねばならず、資料分析や研究成果の執筆に必要な時間を割くことができなかったことも検討課題である。 総計3回の遠隔ミーティングを実施したが、ともすれば連携が困難となる昨今の状況下において、共同研究の効果を増幅させるため、もう少し頻繁なミーティングを実施すべきであったと悔やまれるところである。なかんずくこうした遠隔会議システムが最も効果を発揮する、海外研究者との交流を十分行えなかったことは、大きな反省点であろう。 本共同研究は最終成果としてシンポの実施と論集の公刊を掲げているが、とくに後者の実現に向けて関係出版社等とも、現状を踏まえて状況打開の知恵を結集すべきであった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍は引き続き早急には解消しないと予想されるため、遠隔会議の必要は解消されないことが予想されることから、こうした会議の実施技法の習熟に努めたい。連携効果を上げるため、月に一回程度の遠隔ミーティングの実施を理想とする。加えて感染状況の緩和を踏まえ、長期合宿ミーティングを含む4回程度の対面ミーティングの実施を視野に入れたい。 また海外への調査・研究連携旅行の実施を予定している。具体的にはルネサンス史研究分野で世界的名声を有している、イタリア・ベルガモ大学教授マルコ・ペレグリーニ教授のグループや、人文主義政治思想・歴史思想研究の第一人者ステファノ・バルダッサーリ博士(ISI Florence ディレクター)との共同研究体制の確立である。 また、論集刊行に向け出版社と具体的協議に入る。加えて共同研究力強化のため、若手研究者を追加の分担研究者や研究協力者に迎えることも検討中である(特に今年度より早稲田大学学術研究院に在職することとなった、横尾祐樹氏を分担研究者に迎えることを予定している)。シンポジウム実施に関しても、従来より本共同研究の推進に多大な支援を受けてきた、関西大学法学研究所と具体的協議に入る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ・ウィルスの国際的蔓延のため、国内・海外両面での移動が著しく制限され、当初予定していた研究集会や資料収集旅行にかかわる支出が全く執行できなかったため。今後国内移動に加え、国際的移動規制が緩和されることが予想されるところから、研究集会の積極的開催や調査旅行の実施により、研究計画の遅れを取り戻し、交付資金の有効かつ積極的な利用に努めたい。
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