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最終年度となる2024年度は、これまでの研究成果を次の3つの仕事にまとめた。 まず本研究のアウトラインを日本ミルトン協会が刊行を予定している『ミルトン研究案内(仮)』(春風社)の一章(「ミルトンと経済思想」)として執筆し、主に、17世紀における近代的経済的思想の形成過程において、労働経験における痛みの抑圧と政治を同定し、その緊張関係を体現した作品として、政治家であり詩人であるジョン・ミルトンの詩劇『闘士サムソン』を取り上げた。これまで解釈されてきたような宗教的暴力の悲劇ではなく、この詩劇がより本質的には労働という「人間の条件」の悲劇であることを明らかにした。すでに原稿は提出され、ピアによる査読を受けた初回校正が終わった段階である。 次に、痛みの感情を扱う本研究が提起する思想史領域における方法論的な諸問題について、第19回日本ミルトン協会主催の研究会(11月30日龍谷大学於)にて40分にわたり口頭発表を実施した。タイトルは「痛みの感情史の中のミルトン:思想史の方法論をめぐって」である。提起を多くはらんだ発表だったためか質疑応答の時間も活発な議論が交わされ、手応えを感じた。Proceedingsが日本ミルトン協会の学会誌「MAJ News Vol. 17」(2025)に掲載予定である。 最後に、本研究における思想史的考察が現代の痛みの理論とどの層において交錯するかに関して論文としてまとめた。タイトルは「トラウマの中空構造の思想史:環状島モデルとポスト・ホロコーストにおける公的空間の再構築」(麗澤大学『紀要 108号』)であり、マイナー修正で査読を通過し、2025年度3月に出版された(DOI: 10.18901/0002000171)。
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