研究課題/領域番号 |
21K00100
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
三浦 隆宏 椙山女学園大学, 人間関係学部, 准教授 (90633917)
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研究分担者 |
百木 漠 関西大学, 法学部, 准教授 (10793581)
渡名喜 庸哲 立教大学, 文学部, 准教授 (40633540)
戸谷 洋志 関西外国語大学, 英語国際学部, 准教授 (80807321)
木村 史人 立正大学, 文学部, 准教授 (90757725)
河合 恭平 大正大学, 心理社会学部, 専任講師 (80822220)
橋爪 大輝 山梨県立大学, 人間福祉学部, 講師 (50910262)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハンナ・アーレント / 批判版全集 / 悪の凡庸さ / コスモポリタニズム / 難民 / 新自由主義 / 未来倫理 / 複数性 |
研究実績の概要 |
今年度も『批判版全集』の「組織的な検討」、およびそれにもとづく「アーレントの思想形成過程の解明」という点に関しては、表立った研究成果を上げることはできなかったが、全集の既刊3冊については、代表者の三浦が第3巻を、分担者の渡名喜と百木が研究協力者らとともに第2巻と第6巻の精査を続けており、次年度にはその成果を論文や公開シンポジウムでの報告というかたちで公表する予定である。それを踏まえたうえで、以下、個々人の研究実績の概要を記す。 まず三浦は、ベッティーナ・シュタングネトの『エルサレム〈以前〉のアイヒマン』とアーレントの『エルサレムのアイヒマン』とを比較検討したうえで、そこで判明した事柄を論文「怪物と幽霊の落差」にまとめた。また渡名喜は、共著の論集に論考「ハンナ・アーレントとコスモポリタニズム」を発表し、河合も論文「アーレントの難民論とモビリティ」を執筆した。これらは、当初では2023年に刊行が予定されていた全集第10巻の精査の下準備、および本研究のテーマ(2)「ユダヤ人問題」の研究成果の一端として位置づけられる。 また、百木は「新自由主義」を主題とする二つの論文を発表したほか、ユニークなグラフィックノベルとして評判の『ハンナ・アーレント、三つの逃亡』の翻訳作業に従事しつづけ、訳書を2023年4月に刊行した。さらに、戸谷は『未来倫理』と題する新書を、橋爪も『アーレントの哲学』と題する単著を刊行し、両著はそれぞれ本研究テーマの(3)「出生性」と(5)「活動/行為」の研究成果に関わるものと言ってよい。 なお、「現在までの進捗状況」の項目でも記すように、当初では2021年刊行予定の全集第14巻『精神の生活』がいまだ刊行されておらず、ゆえに研究テーマ(4)「思考・意志・判断」を進めることができていないが、木村は「アクティブ・ラーニング」を主題とする論文を公表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度も本項目で記したが、当初は2021年に刊行予定の『精神の生活』が、結局2022年度内にも刊行されなかった。それゆえ、分担者の木村を中心として進める予定の研究テーマ(4)「思考・意志・判断」の組織的検討が、いまだに着手できないままでいる。 また、今年度に予定していた全集第2巻『ラーエル・ファルンハーゲン』と第3巻『六つの試論/隠された伝統』の研究状況を報告し合う研究会も、研究協力者の博士論文の提出を優先させたり、代表者と分担者計7名の日程的な都合をなかなか合わせられず、実施することができなかった。 とはいえ、橋爪が初の単著を刊行し、また戸谷も精力的に著書を世に問うなど、個々人の研究は着実に進んだと言ってよい。ゆえに「やや遅れている」と判定した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の実施状況報告書でも記したように、研究期間を一年間延長し、2025年3月までの研究計画へと変更する方針でいる。 そのうえで、次年度は既刊の『批判版全集』3冊の研究現状を報告する公開シンポジウムを開催する予定である。 また昨年度のこの項目で記した研究者以外にも、ユダヤ思想史を専門とする小森謙一郎氏に協力を仰ぐことで、『批判版全集』を組織的に精査する研究体制を引き続き充実させてゆくことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度と同様に日本アーレント研究会の9月の大会、および科研費のメンバーで定期的に開催している研究会を新型コロナ対策の観点からオンラインのみで実施しており、代表者・分担者・協力者らの旅費を必要としなかった点が挙げられる。 次年度へと繰り越した分は、研究期間の延長が認められた場合の2024年度の研究経費に充てる予定である。
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備考 |
日本アーレント研究会ホームページ https://arendtjapan.wixsite.com/arendt
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