最終年度にあたる本年度は、前年度に引き続き、代表者および分担者が担当するそれぞれの役割に基づいて研究課題に取り組みながら、そのなかで特に俄芝居と浪花節の関係性、および浪花節芝居について重点的な調査・研究を行った。代表者の薗田は昨年度に纏めていた浪花節芝居に関する調査をもとに論考を発表した。主に都市部の浪花節芝居(節劇)に焦点を当てたもので、成立から隆盛、そして衰退までを概観した。この成果は本研究の課題である俄や浪曲漫才へと繋がる地方への展開までの流れの一旦を示したものとして捉えられる。 俄については、前年度に引き続き、大阪の南河内地域での現地調査を主に聞き取りにより行い、昭和期の俄および関連芸能に関する多くの情報を得た。これを踏まえて11月に調査地の富田林市において地元の俄実演者を交えたシンポジウムを企画し、代表者の薗田および分担者の松岡が口頭報告を行った。また分担者の松岡は前年度までに実施した大阪府南河内地方での調査成果を、日本民俗学会年会や天理考古学・民俗学談話会等でも報告した。 その他、分担者の真鍋は戦後浪曲史における音楽ショーの位置づけを考えるための資料収集を引き続きおこなうとともに、浪曲の地方受容については、北九州に焦点をあてた研究発表をおこなった。また代表者は、聞き取り調査について俄以外にも多方面で行い、大阪市内で芝居小屋に関わる関係者を対象とした調査を行い、それによって浪花節芝居や浪曲漫才の演者が大阪市内郊外を興行で廻っていた実態について情報を得ることができた。いずれも断片的な内容であるが、研究課題の主対象である芸能間の具体的な繋がりについて一定の成果が得られた。
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