研究課題/領域番号 |
21K00114
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研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
出口 実紀 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 非常勤講師 (00612871)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 龍笛譜 / 大神家 / 記譜 |
研究実績の概要 |
本研究は、中世の笛譜『龍笛要録譜』の伝本を調査、分析し、『懐中譜』や『基政笛譜』を加えた大神家の笛譜全体を比較対象とすることにより、笛譜の記譜における変遷を明らかにするものである。中世に成立した大神家の三つの笛譜は、成立年代の古さや譜の内容から、雅楽研究においては重要な資料と早くから位置づけられてきた。しかし、『龍笛要録譜』の伝本だけを挙げても異本や類本などが複数あり、従来の研究では特定の伝本や一つの笛譜に着目して言及されることが多かった。そのため、本研究では三種の笛譜の伝本を網羅的に調査・分析することが必要であると考える。 そこで、初年度にあたる2021年度は伝本調査を中心に実施する予定であったが、新型コロナの影響により予定していた現地調査が十分に実施できなかった為、すでに収集済の伝本と複写等で新たに入手した伝本の内容精査をおこなった。各種伝本の照合作業は継続中であるものの、『龍笛要録譜』の一部の写本には書写者による書付がみられ、三方楽所の楽人が大神家の笛譜をどのように享受していたかを知る貴重な手掛かりを得た。 近世に入ると楽人の手による楽譜が数多く書写され、さまざまな楽家、楽人が自家の相伝や伝承を譜に書き残すようになる。これら近世楽譜の記譜や成立に大きな影響を与えたとされる大神家の笛譜を調査、分析することで、中世以降の楽人たちが『龍笛要録譜』および大神家の笛譜をどのように享受したのか、後の楽譜成立に与えた影響とは何かを解明する手掛かりになると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、『龍笛要録譜』をはじめとする『懐中譜』、『基政笛譜』等の大神家笛譜の伝本調査を中心におこなう予定であった。しかし新型コロナの感染状況に伴い、調査予定であった所蔵先での閉館や閲覧停止が続いた為、当初予定していた伝本調査が十分に実施できなかった。そこで今年度は、遠隔複写が可能な所蔵館およびマイクロフィルム化されている資料を優先して複写入手をおこない、それ以外の所蔵先については、次年度に調査を継続する事とした。
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今後の研究の推進方策 |
伝本調査および資料収集を完了させる事が優先されるが、現在収集できている伝本について内容の精査および照合作業を同時並行で進める事により、早い段階で譜の分析データを研究遂行に活用できる状態に整備する。これにより、当初の研究計画に沿った実施ができると見込まれる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定した現地での伝本調査が実施できなかった為、計上していた旅費および調査先で使用するための機器購入費が未使用となった。これらの経費は、伝本調査を次年度に継続する事とした為、次年度に計上する。
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