研究課題/領域番号 |
21K00117
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
久保田 晃弘 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (70192565)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | メディアアート / インタラクション / アイトラッキング |
研究実績の概要 |
本研究が対象としている、故三上晴子によるインタラクティブ・メディアアート作品《Eye-Tracking Informatics》(以下ETI)における、視線を用いたインタラクションの素過程を実験、記録するためのテストベッドである Proto-ETI の開発を継続した。研究2年目にとなる本年度は、アプリケーションの開発を進める前に、昨年度の研究によって生まれた「インタラクションの鑑賞」を検討するために必要な、メディアアートの文脈におけるインタラクティヴ・アートと、現代美術の文脈ににおける参加型(リレーショナル)アートの比較研究の調査を行なった。さらに本研究の基盤の一つである圏論と量子力学との結びつきによって近年着目されている、図式による操作論に関する予備的な調査を行なった。 人間の視線という意識と無意識の狭間にある、微細かつ繊細な知覚=身体に着目したETIにおいて、視線の動きを捉えるセンサーと画面の描画の関係に着目することが重要である。具体的には、この部分はETIを実行するコンピュータや、デバイスの速度や精度に依存する。そこで、今後開発を再開する Proto-ETI においては、描画の速度(フレームレート)や位置の精度(解像度)を人為的に操作して鑑賞実験を行うことが必要であると考えられる。現状では、使用する機材のスペックに応じて、それらのパラメータが受動的に決まっていたが、今後は動きに遅延を加えたり、描画のフレームレートを可変にしたり、動きに不確実性(ノイズ)を加えるなどの操作を、能動的に行えるようにしていきたい。 こうしたいくつかのトピックスにおける調査研究により、来年度から本格的な開発を再開し、最終的には鑑賞実験を行うために必要な、Proto-ETI 開発の方向性を明確にすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究から生まれた、インタラクションの鑑賞という新たなテーマに関する考察を深めた。そのため、Proto-ETI自体の開発は本年度一時休止したが、そのかわりに、アーカイヴと鑑賞の関係や、インタラクティヴ・アート作品における、インタラクションの意味を熟考することができ、今後の研究の方向性を明確にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、今年度の成果をベースに、proto-ETIの開発を再開し、インタラクション実験に必要な機能を実装していきたい。同時に、インタラクションの公開実験の場を設けて、さまざまなインタラクションデータを取得し、それを分析する作業を行なっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の研究成果を踏まえて、今年度は、アプリケーションのさらなる開発に先だつ文献調査や今後の方向性の明確化の期間と位置付け、予算を繰り越し来年度の開発に回していくこととした。
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