研究課題/領域番号 |
21K00120
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研究機関 | 武蔵野音楽大学 |
研究代表者 |
黒川 真理恵 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 講師 (10648364)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 流行歌 / 木版本 / 詞章本 / 版元 / 歌舞伎 |
研究実績の概要 |
本研究は、近世後期の流行歌の木版本(詞章本)を通して、歌舞伎がどのように二次創作され、共有されたのか、音楽・歌詞・役者絵の3要素から明らかにすることを目的とする。3年間で計画された研究のうち、初年度である令和3年度は、流行歌の木版本に関する基礎的研究を行った。流行歌の木版本は、音楽・歌詞・役者絵の情報が組み合わされた複合メディアだったと考えられる。 研究実施計画に基づき、以下の2点に取り組んだ。 第一に、大阪大学忍頂寺文庫所蔵資料のうち、京都の版元の阿波屋定次郎が出版した流行歌の木版本約200点を対象に調査を行った。その結果、約120点の流行歌の木版本の出版年を特定することができた。出版年を特定することのできた木版本については、内容、曲節、囃子詞、三味線の調弦、表紙を描いた絵師、関連する歌舞伎の情報等の一覧表を作成した。 流行歌の曲節は、数え歌や手毬歌、潮来節、万歳、よしこの節等が多く、流行歌の題材は、芝居や役者、花街、名所名物、道中記、見世物、参詣等があった。阿波屋定次郎は、1770年代から1810年代にかけて、歌舞伎の顔見世興行を題材にした数え歌や手毬歌の木版本を出版していた。歌舞伎の情報文化としては『歌舞伎評判記』が知られていたが、流行歌の木版本も、情報文化のひとつとして流通していたと考えられる。 第二に、流行歌の曲節を明らかにするために、流行歌の五線譜の楽譜集に関する調査を行った。1890年代に大阪の三木書店が出版した『西洋楽譜 日本俗曲集』には、近世後期から近代における流行歌を五線譜に採譜した楽譜が収載されていた。『西洋楽譜 日本俗曲集』は、日本音楽の海外伝播にも影響を与えたと考えられる。本研究では、初版から八版までの収載曲の相違を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査対象とする流行歌の木版本のうち、阿波屋定次郎が出版した木版本については調査を進めることができたが、曲節に関する調査に伴い、五線譜の楽譜集に関する調査に時間がかかったため、ほかの版元が出版した木版本については調査を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、調査対象とする版元を拡大する。具体的には、京都の美濃屋平兵衛、墨屋吉兵衛、松葉屋利助、大坂の和田屋正兵衛、塩屋善兵衛らが出版した流行歌の木版本を調査対象とする。流行歌の木版本の出版年の特定作業を進めるとともに、流行歌の楽譜集の収集作業を進める。流行歌の木版本と楽譜集のデータベースの構築に向けて、研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の図書があったが、当該年度に刊行されなかったため。当該の図書は、次年度に刊行されたため、購入予定である。
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