研究課題/領域番号 |
21K00121
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
児玉 竜一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10277783)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歌舞伎 / 演劇雑誌 / 演劇の記録映像 |
研究実績の概要 |
2022年度は、歌舞伎とメディアの関係について林又一郎旧蔵フィルムの整理・考証と、その公開に貢献した。1920年代から30年代を中心とする戦前の上方歌舞伎の舞台と俳優の日常を記録した貴重なフィルムを、年代考証と人物特定、フィルムの価値自体の位置づけなどを、同時代の新聞雑誌等による証言と突き合わせ、また諸芸能の研究成果を参照して人物写真を収集博覧することで特定をおこなった。それらの調査成果を、国立フィルムアーカイブにおける上映会での2時間におよぶ解説、歌舞伎学会における2時間半におよぶ解説と公開対談等によって公表した。 また、国際的な比較にもとづく演劇とメディアの関係については、早稲田大学とバーミンガム大学を中核とした国際シェイクスピア研究集会における招聘講演において、17世紀から18世紀にかけての歌舞伎上演と、シェイクスピア上演との類似性について触れた。これによって演劇資料にもとづく上演研究の方法をめぐって、シェイクスピア研究者との間での交流を密にして、今後の協力および対話に道をひらくこととなった。 さらに、同時代の演劇をめぐるメディア環境を歴史的に考察しながら記録する試みとして、日本で最も歴史ある演劇雑誌「演劇界」の休刊を機に、その内容を継続する雑誌メディアの存続に関わりつつ、劇界の日録単位の記録を残し続ける方策についての試案を連載継続した。同時に、「SNS時代の歌舞伎研究と批評」をめぐる座談会を学会誌に掲載したほか、「演劇の映像配信をめぐって―松竹・NTライブの事例から」と題する座談会において日英双方の事例紹介をつなぎつつ、演劇の映像資料の歴史性について言及、報告書にまとめるを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の状況によって、いまだ海外渡航が自由になっているとは言い難い環境にあり、その点での進展を期したいと考えている。2023年度は海外からの招聘案件もいくつかあり、いずれも新しい研究課題への進展が期待できるので、そこへ向けての調査研究を重ねたい。
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今後の研究の推進方策 |
海外の研究者との対話においては、ZOOMを活用して同時通訳を入れた座談会等がきわめて有益であること再確認した。日本演劇の研究者は必ずしも英会話に堪能ではないので、海外の日本演劇研究者との連携は日本語で成り立つが、隣接分野との研究者との学際研究においては、ZOOM環境の利活用をはじめ、コロナ禍を経たからこその経験を活用できるようにも思われる。2023年度には、海外のシェイクスピア研究者や、演出家との対話を通して、研究方法の再確認や再認識を研究に組み入れてゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年12月から人事異動による新年度準備に忙殺され、使い切りを必須とする他機関からの分担金の消費を最優先としたため、繰り越し可能な本件については次年度使用に回すこととしたもの。新年度早々に、研究に必要な図書等の購入によって消費できる。
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