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2021 年度 実施状況報告書

日本の伝統演劇における「夢」の表象の研究:比較演劇の観点から

研究課題

研究課題/領域番号 21K00122
研究機関名城大学

研究代表者

岩井 眞實  名城大学, 外国語学部, 教授 (00221789)

研究分担者 小田中 章浩  大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (70224251)
横山 太郎  立教大学, 現代心理学部, 教授 (90345075)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード演劇 / 夢 / 表象
研究実績の概要

日本の伝統演劇における「夢」のナラティブ(表象)について、比較演劇の観点からその特質を見いだすことが本研究の目的である。
「夢」の表象に関する先行研究としては、古川哲史『夢 日本人の精神史』(1967)、西郷信綱『古代人の夢』(1972)、江口孝夫『日本古典文学 夢についての研究』(1987)、酒井紀美『夢語り・夢解きの中世』(2001)、河東仁『日本の夢信仰』(2002)、荒木浩編『夢見る日本文化のパラダイム』(2015)、荒木浩編『夢と表象』(2017)、酒井紀美『夢の日本史』(2017)などがある。しかしこれらは文学一般や宗教学・歴史学から見た夢の表象を論じているに過ぎない。わずかに河東2002に「夢幻能の世界」を見るのみである。演劇を対象とした「夢」の表象について論じたものはないのである。
上記先行研究の方法論を参照しつつ、研究代表者(岩井)および研究分担者2名(小田中・横山)は、歌舞伎(岩井)・人形浄瑠璃(西洋演劇との比較研究をも含む)(小田中)・能(横山)に関する「夢」の表象に関する調査を行った。すなわち誰が誰の「夢」を見、「夢」はその後どのように機能するのかということに關する各ジャンルの戯曲の悉皆調査である。
その成果の一部は、2021年度IFTR(国際演劇学会、アイルランド)において発表予定であったが、コロナ禍のため見送らざるを得なかった。2022年度のIFTR(アイスランド)では、研究代表者・研究分担者3名によるパネル発表に応募し、受理されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

「研究実績の概要」の項でも述べたように、コロナ禍のため2021年のIFTR(国際演劇学会)での発表を見送らざるを得なかった。また、直接対面してのミーティングを一度も行うことができなかったことも進捗の遅れに影響を与えている(zoomでは数回のミーティングを行った)。
ただし、研究代表者・研究分担者は各々に割り当てられた作業は着実にこなしている。相互交流の機会に乏しいために対象・方法などの互換性を欠いているに過ぎないと思われる。

今後の研究の推進方策

本研究では、研究代表者・研究分担者が各々のジャンルにおける「夢」の表象の実例調査を行ってきた。ただしその悉皆調査には相応の時間を要する。つまりは各ジャンルの全作品にあたらなけらばならない。IFTR等での発表は、現時点での中間報告である。したがってこの調査は継続して行ってゆく。
本研究の目的のひとつは、日本演劇研究の成果を英語で世界に発信することにある。そのために世界の演劇に共通のテーマを選んだ。ちなみに前回(2017-2019年度)基盤研究(C)の助成を受けた際のテーマは「復讐」または「敵討」であった。その後範囲を「政治」にまで発展させ、その成果は出版物となった(Japanese Political Theatre in The 18th Century, Routledge)。本研究も英語での著書を念頭に置いている。
「夢」の表象の研究は、単に演劇の諸表象のうち夢幻的・ロマン的なものを抽出して考察することではない。言い換えれば本研究は、夢幻的・ロマン的演劇に関する研究ではない。むしろその先にこれと表裏をなす「リアリズム」を射程においている。リアリズムは表象の写実性とイコールではなく、その先にリアルなものを指し示すことができれば現前の表象自体は写実的であることを条件としない。むしろ夢幻的・ロマン的な表象の介在によって「リアリズム」のパラダイムは豊かになると考える。したがって、本研究は「リアリズムとは何か」という普遍的問いに向かう一階梯と位置づけることができる。

次年度使用額が生じた理由

「研究実績の概要」「現在までの進捗状況」の項に記したとおり、コロナ禍の影響で国際学会(IFTR)での発表を断念せざるを得なくなった。本研究の予算の多くは、国際学会出席のための旅費と発表のための英語校閲費(謝金)のために計上している。
2021年度に使用できなかった助成金は翌年度の国際学会等にプールするつもりである。航空券・宿泊費も高騰の傾向にあるので、次年度にまわしても助成金だけでは賄えない状況になるかもしれない。
なお、研究代表者・研究分担者の計3名全員が国際学会で発表することを想定して予算を組んでいる。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 能における掛詞と縁語の詩学──『井筒』を中心に(上)2022

    • 著者名/発表者名
      横山太郎
    • 雑誌名

      観世

      巻: 88-4 ページ: 46-53

  • [雑誌論文] 能における掛詞と縁語の詩学──『井筒』を中心に(下)2022

    • 著者名/発表者名
      横山太郎
    • 雑誌名

      観世

      巻: 88-6 ページ: 30-37

  • [雑誌論文] 地域演劇との絆を作るために 「あしぶえ」と「森の演劇祭」との関わりから2022

    • 著者名/発表者名
      小田中章浩
    • 雑誌名

      文化資源学ジャーナル

      巻: 1 ページ: 3-25

  • [雑誌論文] ハタラキ考──世阿弥以前の能における鬼の身体2021

    • 著者名/発表者名
      横山太郎
    • 雑誌名

      ZEAMI 中世の芸術と文化

      巻: 5 ページ: 82-112

  • [雑誌論文] 日本の無形文化遺産政策の転換 ──文化庁文化審議会の言説を読み解く2021

    • 著者名/発表者名
      横山太郎
    • 雑誌名

      日本空間

      巻: 29 ページ: 269-289

  • [学会発表] The Dream in kabuki moving toward modern unconsciousness2022

    • 著者名/発表者名
      岩井眞實
    • 学会等名
      IFTR (International Federation for Theatre Research)
    • 国際学会
  • [学会発表] Japanese dream culture and the representation of dream in bunraku2022

    • 著者名/発表者名
      小田中章浩
    • 学会等名
      IFTR (International Federation for Theatre Research)
    • 国際学会
  • [学会発表] Dreams as a narrative device in noh2022

    • 著者名/発表者名
      横山太郎
    • 学会等名
      IFTR (International Federation for Theatre Research)
    • 国際学会
  • [学会発表] 新WEB版「演劇百科大事典」の可能性2021

    • 著者名/発表者名
      岩井眞實
    • 学会等名
      日本演劇学会
  • [図書] 近代博多興行史 地方から中央を照射する2022

    • 著者名/発表者名
      岩井眞實
    • 総ページ数
      585
    • 出版者
      文化資源社
    • ISBN
      9784910714011
  • [図書] Japanese Political Theatre in the 18th Century: Bunraku Puppet Plays in Social Context2021

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Odanaka and Masami Iwai
    • 総ページ数
      228
    • 出版者
      Routledge
    • ISBN
      9780367150624
  • [図書] 島村抱月の世界2021

    • 著者名/発表者名
      井上理恵・五十殿利治・岩井眞實・林廣親・安宅りさ子・永田靖
    • 総ページ数
      340
    • 出版者
      社会評論社
    • ISBN
      9784784511556

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公開日: 2022-12-28  

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