研究課題/領域番号 |
21K00127
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
塚原 康子 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (60202181)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 軍楽隊 / 近代日本音楽史 / 楽器 / 教則本 / 楽譜 / パリ音楽院 |
研究実績の概要 |
2021年度は、主にアジア歴史資料センター(JACAR)の陸軍関係公文書を用いて、明治期陸軍軍楽隊の楽器・教則本・楽譜の購入と移送、軍楽隊員初のフランス留学、清国との軍楽交流に関する学会発表と論文作成を行った。 楽器に関して、ダグロン着任後の明治5年(1872)に陸軍楽器一揃(25品)をフランスに注文し、明治7年に軍事顧問団の騎兵士官アマド所持「仏楽器サクサホーヌ」を買い上げ、明治8年にはパリのグーマ社より、9年にはプレイエル社(ピアノ1台)とグーマ社・ベッソン社から軍楽器とリード等附属品およびソルフェージュ・楽器の教則本を購入していた。また明治21年(1888)の大阪鎮台(後の第四師団)軍楽隊設置時に、陸軍教導団所蔵の教則本11種・楽譜83種(目録付)を東京から移送したことがわかった。 明治15~22年(1882~1889)の古矢弘政・工藤貞次の留学では、渡航から2年後の1884年11月18日に両人がパリ音楽院に入学を許可され、古矢はジョルジュ・ジレに1885年12月8日まで、工藤はシリル・ローズに1887年6月23日まで師事し、年2回の定期試験も受けていたことをフランス国立古文書館所蔵文書から確認した。パリ音楽院離籍後は、フランス陸軍歩兵第101連隊に1年半付属勤務したことも判明した。 明治30年代には当時の日本陸軍の「応聘将校制度」の下で、湖広総督・張之洞の軍隊での軍楽隊新設のため明治35年(1902)軍楽器半隊分を払い下げ、明治38~43年に陸軍一等軍楽手・大内玄益が両広総督・岑春けんの招聘で広東将弁学堂附属軍楽隊を指導したことを確認した。 陸海軍軍楽隊在籍者データベースおよびこれに関連して比較対象でもある東京音楽学校在籍者データベースについては、改訂作業のためのデータ加工を行い、複数のアルバイトを確保して改訂作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた明治期の陸軍軍楽隊に関する学会発表と論文執筆を進め、2021年度発行の大学紀要に掲載された。陸海軍軍楽隊在籍者データベースについても、関連する東京音楽学校在籍者データベースと併せて改訂作業を開始し、順調に作業が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って、データベース改訂作業に加えて、明治期の陸海軍軍楽隊に関する史料集作成作業についても、2022年度から作業を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は学会発表・論文作成を最優先したため、データベース改訂作業の準備に取り掛かるのが遅くなり、結果的に謝金の支払額が予定額より少なかった。 2022年度は、さらに人員を増やして作業を進める予定である。
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