研究課題/領域番号 |
21K00134
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
笠原 恵実子 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (40740692)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アース・ワーク / ショショーニ族 / スパイラル:ジェッティ / サン・トンネル / ダブル・ネガティブ / アメリカ現代美術史 / ネバダ核実験場 / 覇権主義 |
研究実績の概要 |
2022年度は、本来2021年度に予定していた アースワーク作品を訪問・撮影するフィールドワークを遂行するため、年度はじめから夏までは旅の計画を立てる準備期間とした。8月15日から29日に実際に渡米をし、スパイラル・ジェティー(ロバート・スミッソン作)、サン・トンネル(ナンシー・ホルト作)、ダブル・ネガティブ(マイケル・ハイザー作)の3作品を訪れ、それぞれ撮影を行った。また、作品周辺のショショーニ族居留地、及び部族代表事務所を訪れた。ショショーニは主にイースタン・ショショーニ、ノーザン・ショショーニ、ウェスタン・ショショーニ、ゴーシュートに分類されるが、ユタ州とネバダ州を中心に周った今回は、スカル・ヴァレー・インディアン居留地とノースウェスタン・バンド・オブ・ショショーニ・ネイション事務所を訪れ、本研究についての意見交換や、ショショーニ部族の人々へのインタビューの可能性について話をすることができた。また、ラスベガスにあるNational Atomic Testing Museum(国立核実験美術館)を訪問し、本研究の対象地域が核廃棄や核実験の行われる地域と大きく重なる点についても再認識し、政治的文脈の考察をさらに深めることとなった。他にも訪問を予定していたアースワーク作品が2箇所あったが、予約制のライティング・フィールド(ウォーター・デ・マリア作)は2-3年先まで埋まっており訪れることができず、また、まだ未完成であるローデンクレーター(ジェームス・タレル作)は作家のアポイントを取ることができずに訪問できなかった。 帰国後は、フィールドワーク時の写真や映像データの整理、訪問先での対話や行動記録の整理を行うと同時に、2023年夏に予定している2回目のフィールドワークの準備をおこなっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍で全く活動ができなかった2021年度を引きずり、研究はちょうど1年遅れて進行している状況である。また、昨年度は10-11月時の連休期間に学事の欧州出張があったため本研究に充てることができす、夏に対話をしたショショーニ部族の人々を再訪することができなかったことが悔やまれる。さらに、予定していたアースワーク5点のうち2作品、ライティング・フィールド(ウォーター・デ・マリア作)とローデンクレーター(ジェームス・タレル作)を訪問することができなかったことも、研究の遅れを取り戻せずにいる要因である。結果、本研究が予定以上に時間がかかっているような意識を持ってしまっており、研究成果発表はまだできないのではないかと思う気持ちにつながっている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度夏には再度渡米し、フィールドワークを行うことを予定している。その目的は2022年に訪れたショショーニ族の方たちを再訪し、対話を深めることにある。対話内容は、彼ら部族に元来帰属する土地において行われてきた様々な歴史的及び文化的覇権行為についてである。その中でも特に、戦後若者たちによって発見された、アメリカの美学やサブカルチャーの文脈が、インディアンたちの培った文化によるところが大きい点を踏まえ、70年代以降の代表的アースワーク作品について対話をしていく。それは質疑応答ではなく、自己再起的な要素を誘発する対話であり、その様子は録画される。また、核廃棄場や核実験場として使用されている彼らの土地についても対話をし、文化的覇権行為以上に暴力的な政治的覇権についても、彼らの考察を導きたい。 フィールドワークで得た材料は帰国後データ化され、ビデオ作品制作のマテリアルとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19パンデミックにより2021年度の活動ができなかったために、この2年間に本来行うはずであった2回のフィールドワークのうち1回のみが行われ、次年度使用額が生じる結果となった。この残金を使ってもう1回行う予定であったフィールドワークを2023年度に遂行することことを計画しており、旅費やその準備費用、現地でのアシスタント代などに用いることとなっている。
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