研究課題/領域番号 |
21K00135
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
馬 定延 関西大学, 文学部, 准教授 (90625047)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 現代映像芸術 / 映像メディア / スクリーン・プラクティス / インスタレーション |
研究実績の概要 |
前年度から引き続き、世界がコロナ禍に見舞われている中でも、初年度の2021年は「現代美術と映像メディア」を研究するには絶好の年だったといえる。京都国立近代美術館と水戸芸術館現代美術ギャラリーを巡回したピピロッティ・リストの大規模個展「Your Eye is My Islandーあなたの眼はわたしの島」、新潟県立近代美術館、国立国際美術館、東京都現代美術館を巡回した「Viva! Video 久保田成子」展、ホー・ツーニェンの2つの個展「Voice of Voidー虚無の声」(山口情報芸術センター)と「百鬼夜行」(豊田市美術館)、東京のアサクサとオンラインで同時開催されたロイス・アンの個展「満州の死…それは戦後アジア誕生の基盤である」など、映像作品を中心とする展覧会が開かれたからである。研究代表者は1年間、これらの展覧会に対する調査研究と批評を積極的に行った。リストとはインタビューを、久保田展では関連トークイベントで、美術におけるビデオという映像メディアの最初の50年を記録した『Video/Art』の著者、元ニューヨーク近代美術館のキュレーターのバーバラ・ロンドンと対談を行い、久保田展のレビューを韓国の雑誌に寄稿し、東京都現代美術館のウェブサイトにその日本語版を公開した。また、久保田のパートナーであり、ビデオアートの父とも知られるナムジュン・パイクの生誕90周年となる2022年を記念するNam June Paik Art Center主催のオンライン国際シンポジウムに参加した。表象文化論学会研究発表集会では、コロナ禍と映像作品を中心とする展覧会の形式の問題について、リスト、ホー、アンの個展を事例に分析した研究発表を行った。そして、ホーの「Voice of Voidー虚無の声」展に対する批評を日本語と英語で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はコロナ禍による移動の制限を踏まえて、日本と韓国のアーティストを中心に研究を行う予定だった。しかし結果的には、久保田成子とナムジュン・パイク以外にも、ピピロッティ・リスト、ホー・ツーニェン、ロイス・アンらにまで研究対象を広げることになった。これは無論ポジティブな意味での方向性の修正であり、出身地や活動の拠点などによる分類に囚われず、同時代の映像作品の美学を幅広く、深く研究することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
①前年度に引き続き、未邦訳の映像芸術論の文献調査を継続して、翻訳対象のリストを作成する。②前年度の重要な成果であるホー・ツーニェンの「Voice of Voidー虚無の声」のレビューから、ホーによる日本三部作と知られる「旅館アポリア」と「百鬼夜行」とまで研究対象を広げて論文を執筆する。③韓国の国立現代美術館ソウル館にて9月まで開催中のヒト・シュタイエルの個展「データの海」を夏の間に実見して、企画担当者にインタビューする。さらにその内容を踏まえて、シュタイエルの作品と著書に関する論考を執筆する。④他にも国内外のアーティストとインタビューを行い、現代美術と映像メディアに関する複数の観点を整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年にはコロナ禍による国際移動の制限により、予定していた海外への調査研究が実現されなかったため、2022年度の旅費に計上することになった。
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