最終年度には、共同研究の成果が次の形で出版された。まず、前年年に研究代表者と研究分担者が企画・登壇したシンポジウムの記録と解題が、特集「映像と時間:ホー・ツーニェンをめぐって」として『表象』第17号に収録された。また、研究代表者の論文「この領土の芸術、この芸術の領土:ホー・ツーニェンの<日本三部作>をめぐって」と研究分担者のインタビュー「制度をつくり直す問いかけとしてのキュレーション」が、『この国(近代日本)の芸術:<日本美術史>を脱帝国主義化する』の第5章「戦後アジアを再考する」に収録された。なお、研究代表者の「時間の彫刻」と研究分担者の「なめらかなスクリーンとその敵」という論考が、作品集『荒木悠 LONELY PLANETS』に収録された。
研究代表者と研究分担者は、上映会や展覧会の企画など、お互いの活動を有機的につなげながら共同研究を遂行した。例えば、コロナ禍による入出国規制によって実見していないチョン・ソジョンとアン・ジョンジュの《機械の中の幽霊》(2021)を中心に、同時代における映像メディアの可能性を論じた研究代表者の論文には、2023年春に韓国に滞在しながら研究を行った研究分担者と共同で行った、チョンとの聞き取り調査が反映されている。さらに、本研究の出発点となった研究代表者の論文「光と音を放つ展示空間ー現代美術と映像メディア」(2019)の中で取り上げられたヒト・シュタイエルと研究分担社が行った対談が、2024年夏にインタビュー記事として公開される予定である。
研究期間全体を通じて、国内外のアーティストによる映像メディアを用いた芸術実践について、実証的な研究調査を行うことができた。当初は成果を1冊の本にまとめることを想定していたが、実際の成果は個別の作家ごとに独立しており、書籍、シンポジウム、論文、記事、上映会、展覧会など、多様な形で発表された。
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