研究課題/領域番号 |
21K00147
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森山 緑 慶應義塾大学, アート・センター(三田), 講師(非常勤) (20779326)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 現代美術 / 剥製 / 毛皮 / 狩猟 / 神社信仰 / 展覧会 / 鑑賞体験 |
研究実績の概要 |
本研究では、動物由来の素材(剥製、毛皮、骨など)を用いた美術作品について扱うものである。ドイツや英国等ヨーロッパおよび米国では2000年代以降、近現代美術作品と動物素材について研究が進展しているものの、日本やアジア諸国での研究が遅れている現状がある。展覧会での展示等で日本においても剥製美術作品が数多く見受けられるが、網羅的な調査と研究はまだ行われておらず、本研究が先駆となっている。日本における動物観の変遷は欧米のそれと比較すると歴史的文化的なコンテクストの差異が大きいと推測され、人間の生活に関わる部分、すなわち食文化や狩猟文化とそれに伴う信仰を考察に加えなければならないと考え、文化人類学、自然科学史、倫理学など他分野の知見も得ながら調査研究を行っている。 本年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、国内での聞き取り調査もままならぬ状況であった。当初の計画では、、剥製の歴史的変遷と剥製製作の現状についての調査を実施し、日本の美術家が剥製や毛皮を入手する手段として交流のある剥製製作所および皮なめし業者への取材を行う計画であったが、それが果たせなかった。具体的には国立科学博物館等の業務を請け負っている上野剥製所(台東区)、博物館・美術館の標本や展示を請け負う株式会社西尾製作所、美術家・鴻池朋子と親交のある皮なめし業者(北海道)ほかを予定していた。その中で、まん延防止措置が解除されて以降(2022年3月)都内にある創業50年近い剥製製作スタジオ「アトリエ杉本」には取材に行くことができ、非常に有益な知見を得ることができた。 さらに、日本における狩猟に関し害獣駆除の歴史とマタギに代表される猟師文化について、関連する機関への調査、取材ができなかったが、文献資料の収集、画像探索を実施し、それらのリスト化に着手できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス症感染拡大の影響により、国内での調査、取材が困難であったことから、先送りせざるを得なかった。 文献、資料の収集、画像の探索については継続的に実施し、基礎となるスプレッドシートへのリスト化に着手できた。また動画についても同様に収集と管理を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、まず延期していた国内での調査、取材を実施する予定である。具体的には長野県庁鳥獣対策・ジビエ振興室、諏訪大社や神長守矢史料館での歴史史料調査および、秋田県のマタギ資料館(北秋田市)での調査取材を計画している。 また他分野の学術研究者との意見交換について、美術家・鴻池朋子作品に詳しい芸術人類学者の石倉敏明氏(秋田公立美大准教授)および人類学者の奥野卓司氏(山階鳥類研究所所長)へ取材を実施する計画である。 また2020年2月の取材において本研究への助言をいただいているハンブルク大学教授Dr. Petra Lang-Brendt氏に再び意見交換の機会を持つ予定である。2020年の調査時に判明した、剥製美術作品の共同制作者への調査、取材(インタビュー含む)を行う計画があり、2022年度以降に実施予定である。(ベルリン自然博物館の剥製師2名、Robert Stein氏およびJurgen Fiebig氏)
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大により、国内での調査、取材が困難であったため、次年度使用額が生じた。2022年度分と合わせて、延期していた国内調査、取材を実施する予定である。具体的には、長野県庁鳥獣対策・ジビエ振興室、諏訪大社や神長守矢史料館での歴史史料調査および、秋田県のマタギ資料館(北秋田市)での調査取材を計画している。 また他分野の学術研究者との意見交換について、美術家・鴻池朋子作品に詳しい芸術人類学者の石倉敏明氏(秋田公立美大准教授)および人類学者の奥野卓司氏(山階鳥類研究所所長)へ取材を実施する計画である。
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