研究課題/領域番号 |
21K00150
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
水野 僚子 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (30469209)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 女性像 / ジェンダー / 日本絵画 / 絵巻 / 在外作品所蔵調査 |
研究実績の概要 |
本年度もcovid-19の感染拡大の影響により、美術館、図書館、資料館での調査研究は断られることが多く、ほとんど実施できなかった。特に、県外をまたぐことがほぼ不可能な社会状況であったため、本年度予定していた関西方面、九州方面での調査が、全くできなかったことは、研究の進展に大きな影響をもたらした。しかも関東・東京近隣の美術館においても、資料・作品調査の許可が下りず、実際の作品を調査することができなかったことは、作品調査が研究の根幹をなす本研究にとっては大きな痛手となった。展覧会も少しずつ開催されるようになったものの、非情に少ないことから、従来紹介されてこなかった作品の発掘もなかなか進展しなかったことは、非常に残念であった。、 このような中、今年もまた昨年に引き続き、書籍から取得できる図版の収集と、東京文化財研究所の写真等の調査を重点的に行い、今後の調査に活かせるように、数年前から作成している女性像のデータベースの充実を図るとともに、次年以降にスムーズに作品調査を行うための準備として、国内外に所蔵されている作品を既刊の書籍や写真資料などからできる限り精査し、女性像と物語の関係などを詳しく調べ、類似の図像がないかといった調査研究を主に行い、今後調査すべき作品の選定などをより詳しく行った。 本年は、国立歴史民俗博物館の企画展示「性差の日本史」の展示プロジェクトメンバーとして調査研究、展示、図録の執筆に関われたことは、重要であった。歴史学、民俗学、考古学、女性史、社会史、美術史といった隣接領域の、しかも幅広い時代を専門とする研究者とジェンダーに関する活発な議論が行えたことは、本研究に新しい視点をもたらし、さらに幅広い視点から見るべきヒントなどを与えられた点で、非常に意義のあるものとなった。 一方来年度は、海外の作品調査を予定しているので、その準備として在外作品の所蔵調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
最も大きいのは、コロナ禍によって、実際の作品や資料の調査がほとんどできなかったことである。本来の予定では、本年度は、九州・関西・北関東などの調査研究を予定していたが、都内の美術館においても許可されることなく、写真資料や書籍等からの情報を収集するのみに限られてしまったことは、調査の進展に大きな影響をもたらした。中には詳細な写真を提供してくださった美術館等もあるが、写真のみでは全体のコンテクストとともに考察することは難しく、作品研究として充実した研究が行えなかった。このことから、作品研究として論考を出すこともできなかった。 展覧会の開催も少なく、従来見たことのない作品などを発見する機会も非常に少なくなった。予算があっても、調査ができないと、先に進めないため、焦るばかりであった。 ただし、すぐに調査が解禁になったときのため、国内外に限らず、調査がスムーズに行えるように、準備に関しては丁寧に行うようにし、特に海外の美術館等の所蔵確認などは、メールなどを通じて、ある程度行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
作品の調査が圧倒的に遅れているので、できるだけ早く調査ができるように、調査先と連絡を密にとり、調査をスムーズに行っていきたい。 特に次年度は、自らの海外研修期間と重なることにより、半年間北米に、半年間欧州の日本美術研究の拠点に在籍することとなるので、その間にできる限り作品の調査を行い、新たな作品の発見を行うよう努めたい。 また、海外においては、作品を分析・考察する新しい方法論や理論を学びたいと思っている。一方、作品のデジタル化、特に絵巻作品のデジタル化による調査研究の新しい手法などを学びたいと思っている。特に欧米の研究者との交流を積極的に行い、自らの研究に活かせるようにしていきたいと考えている。 なお、本年度に行う予定であった国内の調査に関しては、予定よりもかなりおそくなってしまうものの、すぐに実施できるように準備を欠かさず行うとともに、それらを分析する能力をこの一年で新たに身に着けたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
最も大きな理由は、本来行うはずであった国内の調査研究のための出張がほとんどできなかったため。本年度できなかった調査研究を、次年度以降に行うために、残額として残した。アルバイトを雇用する予定であったが、当該大学院生が就職したため、別の人材を探すことができなかったことから、人件費もそのまま使っていない。次年度は、国外での活動となるため、アルバイトを雇用することはせず、その次の年に、国内の調査およびデータの整理など一気に進めたいと思っている. なお、次年度は海外で調査を行うことから、旅費の割合がかなり多くなると予想している。なるべく同じ地域は、同じ時期にいくこととし、予算を削るように心がけたい。
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