寺社縁起絵巻を中心とする中世仏教説話画に描かれたモチーフやその集合体としての図像を「造形語彙」として分節し、それが経典や説話のテクストと結びつくことで意味を生成する構造について明らかにした。具体例として、愛執、闘諍、破戒、災厄、監察、鎮魂、発心、廃墟、復興といった意味に結びついた図像を特定し、個々の作例における使用例を抽出することで、寺社縁起絵、高僧伝絵、六道絵、法華経といった主題の違いを超えて共有される造形語彙の機能を明らかにした。さらに、ある図像が、異なる時代や環境において、成立当初とは異なる意味と結びつき解釈が変容する事例にも留意し、図像と意味の動的な関係性を解明した。
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