研究課題/領域番号 |
21K00154
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
伊永 陽子 武庫川女子大学, 附属総合ミュージアム, 助教 (60896992)
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研究分担者 |
佐藤 優香 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 客員研究員 (40413893)
横川 公子 武庫川女子大学, 附属総合ミュージアム, 教授 (50090923)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人形 / 近代女子教育 / 有職故実 / 王朝文化 / 教育標本 / 平安朝服飾 / 学校資料 / 島津製作所標本部 |
研究実績の概要 |
前年度、女子高等教育機関を前身にもつ大学等を対象として行ったアンケート調査で得た回答をもとに、「有職人形」など教育標本としての人形類を所蔵する機関に訪問調査を行った。そこで得た4校と武庫川女子大学附属総合ミュージアム蔵の合わせて5例の島津製作所標本部製「中古装束人形」の事例それぞれの来歴や特徴を記録し、特に人形の服飾に着目して比較検討した(伊永論考)。人形の服飾の文様や色彩が踏襲されたことや随時有職故実が改善されたことが明らかとなったほか、各人形の資料的な位置付けがある程度確認され、今後島津製作所標本部製ではない人形や新たな資料と比較する際に有効と思われる。また、前年度企画開催した展覧会会期中に行った関連イベント、オンラインフォーラム「戦前期女子高等教育における教育標本」における講演3件(日本女子大学森理恵氏・島津製作所創業記念資料館川勝美早子氏・京都市学校歴史博物館林潤平氏)とパネルディスカッション(司会:横川、パネリスト:前掲講演者3名・伊永)を報告書として刊行した。これらの成果はアンケート対象機関に還元し、今後も情報共有や連携を図っていく。 武庫川女子大学附属総合ミュージアム2022年度秋季展では、所蔵資料を通じて近代女子教育に関わる研究を推進し、図録『粋を尽くす―近現代のきもの』においてその成果を発表した(伊永「和歌散らしで彩るきもの」p.25・横川「半衿型紙・半衿図案・半衿絵刷」p.40)。横川はそのほか、教育標本資料を用いて明治期における女子教育の研究を深めなど、論考を発表した。 佐藤は、学校資料に関する研究を全日本博物館学会で発表したほか、龍谷ミュージアム秋季特別展では仏教児童博物館の資料に関する記念講演会を行った。仏教児童博物館にはアメリカから贈られた人形があり、その特徴は「有職人形」に通じるもので、「有職人形」を研究するにあたり有益な情報が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度のアンケート調査の結果を受けて行った教育標本の訪問調査がまだ完了していないため。
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今後の研究の推進方策 |
人形等教育標本所蔵校への訪問調査を引き続き推進する。(伊永・横川・佐藤) 島津製作所創業記念資料館において「中古装束人形」関係資料のさらなる資料収集を行い、地理学の教育標本である風俗人形との関係性、京都の郷土人形としての「有職人形」の存在意義などにも焦点にを当てる。また、訪問調査して得た情報によると、島津製作所標本部製ではない人形や写真資料によって伝わる人形、戦後のものと思われる人形などの資料があることがわかってきており、それぞれの基本情報の記録と比較検討をさらに深める必要がある。それとともに、「有職人形」が学校教育標本として用いられた背景を有職故実研究の観点からさらに明らかにする。(伊永) 近代女子教育における教育標本は人形のほかにも裁縫雛形を代表としてさまざまあり、それらの教育標本資料を通じて、女子教育の通念や傾向を見出すことを目指す。(横川) 学校資料についてさまざまな角度から検討しつつ、教育的観点から結論をまとめる。(佐藤)
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査の回答を受けての訪問調査や資料収集のための調査旅行を随時行っているものの、新型コロナウイルス感染症の影響などで遅れが生じており、旅費が大幅に未使用のままとなっている。訪問調査は次年度に引き続き行っていく予定である。 年度内に論考などの成果を報告書として、アンケート調査対象校に発送する予定であったが、報告書納品が間に合わず、印刷製本費や発送費用の支出が次年度となった。
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