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2021 年度 実施状況報告書

19世紀の日本における絵具素材の移り変わり

研究課題

研究課題/領域番号 21K00155
研究機関国立歴史民俗博物館

研究代表者

島津 美子  国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (10523756)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード手彩色写真 / 近代絵具
研究実績の概要

研究初年度は、神田佐野文庫(神田外語大学)が所蔵する「JAPAN: Described and Illustrated by the Japanese, Edition De Luxe」全十巻(フランシス・ブリンクリー編著)(1897年発行)から、第1巻および第8巻にみられる彩色材料を分析した。また、同大学が所蔵する写真集「Illustrations of Japanese Life」(高島捨太著、小川一眞写真)(初版1896年)の調査も行った。文献調査としては、1880年代に発行されたインキ製法などを記した技術書の調査を行った。
明治期のカラー写真は手彩色で行われていたことが知られているが、その際用いられた絵具についての分析事例はいまだ限られている。本調査では、デジタル顕微鏡による表面状態の観察、ポータブル蛍光X線分析計による元素分析を行い、可視分光反射率の計測を試みた。絵具の状態から当初予想したように、染料から作られた絵具が使われていた可能性が示されたが、現在のところ材質の特定には至っていない。
また、「JAPAN」に含まれる巻末の木版画は多色摺により、「Illustrations of Japanese Life」の表紙は従来の彩色技法により着彩されている。手彩色写真との比較のため、これらの彩色材料を調査したところ、赤には古くから使われている水銀朱が、緑には幕末明治期に輸入され始めたと考えられている合成顔料エメラルドグリーンが使われたものと推定された。赤や緑は手彩色写真にも見られる色相であるが、同じ書籍内であっても写真の彩色にはこれらの顔料は用いられていなかった。赤と緑のみではあるが、写真彩色では、木版画や肉筆画とは異なる材料が使われていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実資料をより安全に分析するための分析計専用の架台を準備することにしたが、この準備に時間を要したのに加え、コロナ禍による想定以上の行動制限により実資料の調査が滞ってしまったため。

今後の研究の推進方策

初年度調査を行った「Illustrations of Japanese Life」は、初版刊行年の1896年以降、10版以上を重ねており、その3版が所属先に所蔵されていることがわかっている。今後、これらの実資料の分析調査を進めるとともに、同時代の手彩色写真を別途入手し、染料から作られた絵具の原料分析を実施する。コロタイプ印刷の彩色材料についても、実資料の調査を追加で行い、材料の同定を目指す。
明治期の化学工業に関する文献調査によると、アラビアゴムを媒材とした水彩絵具による彩色が行われていた可能性が考えられる。一方で、アメリカの手彩色写真を分析した先行研究では、油性の絵具が使われていたとの報告もあり、国内の手彩色絵具の媒材についても検討を行う。
初年度は実資料の調査件数が限られてしまったが、次年度以降、調査数を増やすことで明治期の彩色写真に用いられた絵具の全体像を明らかにすることを目指すとともに、他の資料の分析調査も行い19世紀の絵具素材を概観できるようにする。

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公開日: 2022-12-28  

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