明治期に製作された手彩色写真の絵具を調査し、カイガラムシ由来の赤絵具(カーマイン)、合成のエオシン、メチルヴァイオレットなどが使われていたことを明らかにした。これらの絵具は、先行研究により明らかにされていた錦絵や仏像彩色に用いられた絵具と重複する。一方で、その使われ方は異なっており、錦絵では同系統の色相の絵具を混ぜたり、異なる色調を摺り重ねたりするなど、色表現が多彩である一方、手彩色写真や仏像彩色ではシンプルな色表現の場合が多かった。基本的に製作技法は従来のままであったため、それぞれの技法に適合した新しい絵具が選択され、用いられるようになっていったものと考えられる。
|