研究課題/領域番号 |
21K00157
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
鍋島 稲子 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 客員研究員 (60869139)
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研究分担者 |
富田 淳 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 副館長 (20227622)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 表装文化 / 中国書画 / 日本書画 / 掛け軸 / 冊子本 / 巻物 / 裂 / 紐、爪 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、下記の国内博物館・美術館等において中国書画及び日本書画の作品調査を実施した。計測や撮影などが可能な作品についてはデータを収集した(博物館・美術館で開催された他館の所蔵品が展示される特別展等での作品調査も含む)。 東京国立博物館、台東区立書道博物館、三井記念美術館、大阪市立美術館、龍谷ミュージアム、徳川美術館、岐阜市歴史博物館、愛知県美術館、名古屋市博物館、昭和美術館、泉屋博古館、京都国立博物館、土浦市博物館、法雲寺、兵庫県立美術館、小原道城書道美術館、徳島県立書道文学館、九州国立博物館、、永青文庫、常盤山文庫、五島美術館、静嘉堂文庫美術館、橋本コレクション(個人蔵)、瀬津コレクション(個人蔵)、大山コレクション(個人蔵)。 上記の調査において得られたデータや成果の一部を、東京国立博物館と台東区立書道博物館による連携企画の展覧会「没後700年 趙孟フとその時代-復古と伝承-」に反映させ、作品展示や図録などを通して一般に公開した。書画における表装文化は基本的に脇役であるため、通常の展覧会図録等では書画の本体のみが図版として紹介されることが多い。表装文化を伝える貴重な作例は、素材の不足等から急速に失われつつあり、記録として残すことが急務であると思われる。今回作成した展覧会図録には、表装を含めた作品全体の図版を掲載し、掛け軸に使用した裂や冊子本の表紙裂、巻物の表紙裂や紐、爪など、現存する書画の表装に関する基礎的な情報を、図版で公開することに重きを置いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響で、当初計画していた作品調査ができなかった機関もあったが、新たに交渉し、調査を受け入れてくださったところがあったため、おおむね順調に進んでいる。 大阪市立美術館については、今年度秋より長期休館となり、作品調査ができなくなるため、令和3年度中に予定より多くの作品調査をさせていただいた。また、予定していた陽明文庫や出光美術館、文化財修理所については、コロナの影響で作品調査が難しかったため、今後、調査が可能になり次第、あらためて行うものとする。 国内における作品調査は、コロナの状況を注視しながら、先方にご迷惑をおかけしないよう日程調整し、今後も引き続き実見して作品のデータを収集・整理していく。
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今後の研究の推進方策 |
中国の歴史上、書画コレクションの双璧をなす宋時代と清時代の宮廷においては、表装に厳格なルールが定められていた。現存する作例を見る限り、宋の宣和表装も、清の乾隆表装も、ともに古代中国の宇宙観に基づきながら厳格なルールを定めていると考えられる。本研究ではその仮説を検証するために、より多くの実例を調査し、データを収集する必要がある。 中国及び日本の諸文献から表装に関する記述を整理し、歴史的な表装の様式を明らかにしつつ、現存する書画の表装に使用される裂や紐、爪、軸首などの状況、また作品の保護・保存のための包裂や保存箱など、表装に関する様々な資料を可能な限り実見し、データを収集して整理を進めていく。 国内所蔵分については、継続して調査を行なう。今後は国外所蔵分の調査も行ない、その特徴を明らかにしようと考えている。令和4年度の計画では、北宋時代の徽宗皇帝による宣和表装、および南宋時代の理宗皇帝による蘭亭序コレクションの表装について調査し、具体的な特徴を明らかにする予定である。宣和表装については、原装を伝える遺例が極めて少ないため、その片鱗を残す作品を実見する。北京故宮博物院や上海博物館などに所蔵される。理宗の蘭亭序コレクションは、香港中文大学文物館、北京故宮博物院、上海図書館、シカゴフィールド自然史博物館などに所蔵される。また清時代の乾隆表装については、台北国立故宮博物院、北京故宮博物院、上海博物館などに所蔵される。 以上の地域での調査を今後の研究対象としているが、コロナの現状を考えると、特に中国への渡航をはじめ、海外調査はまだ難しい状況にある。海外渡航が可能になる時期まで待ち、補助事業期間延長の申請が必要になることも視野に入れておく必要がある。
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