研究課題/領域番号 |
21K00171
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
喜多崎 親 成城大学, 文芸学部, 教授 (90204883)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 美術史 / ベルギー / 象徴主義 |
研究実績の概要 |
本研究は象徴主義絵画について、その画面構造をレトリックという視点から分析することで、美術における象徴主義の性格を考察するものである。 当初、海外での作品調査を予定していたが、コロナの影響で渡欧が難しくなり、文献中心の作業に切り替えて研究を継続した。 象徴主義の文学、特に詩は、伝統的な語彙や語法をずらして用いることで、明確な意味の伝達を阻害し、暗示的な効果を上げた。象徴主義絵画もまた、同様の効果を求めている。絵画においてそれらに代わるものが、伝統的な図像や空間処理であると仮定することで、そこに意識的に行われている操作を、暗示的効果を得るためのレトリックとして分析することが可能になると言う仮説が成り立つ。この仮説を検証する上で本研究はベルギーの画家フェルナン・クノップフ(1858-1921)の作品を対象としている。 研究計画においては①画面のトリミングと暗示効果、②額・枠構造と作品概念の拡大、③写真的発想と記憶といった点からのアプローチを挙げたが、これらの特徴を考える上でクノップフの全作品カタログなどをもとに、対象となる作品の選定を行った。これらの特色は個々にはクノップフの作品にもちろん認めることが出来るものだが、まず3つすべてが関係する作品として、1901年に制作されたパステル画《白・黒・金》(ブリュッセル、ベルギー王立美術館)を研究対象の中心に据えることが適切だと判断した。この作品は、左右をトリミングしたような極端に縦長の構図を持ち、画家本人がデザインした額に入れられ、恐らく妹をモデルとした写真に基づき、作品自体も一度油彩画で描いたものをモノクロームの写真に撮ったものをもとに、ほぼモノクロームで再制作されたと考えられるからである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ベルギーやフランスでの作品調査を予定していたが、コロナの影響で渡欧しての調査が極めて困難になったため。
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今後の研究の推進方策 |
欧州におけるコロナの状況が好転した場合には、今年度の後期にでもベルギーおよびフランスにおける作品および文献調査を行う。また、具体的な分析対象となるクノップフ作品をひとまず1901年に制作されたパステル画《白・黒・金》(ブリュッセル、ベルギー王立美術館)に定めたので、関連作品、イメージ・ソ-ス、図像、画面構造の分析をする上で必要な資料の収集、文献の読解を継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 コロナのため海外調査を見送らざるをえなくなったため。 使用計画 海外調査および資料の購入によって使用する。
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