本研究では、19世紀末から20世紀初頭に活動したベルギーの象徴主義の画家フェルナン・クノップフ(1858-1921)の絵画作品を対象に、象徴主義絵画のレトリックを分析した。従来、クノップフの象徴主義に関しては、そのモティーフの意味の解明が大きな柱となってきたが、その多くは明確な根拠に基づくものではなく、研究者の間でも解釈の分かれるものが少なくなかった。本研究では特に《私は私自身に扉の鍵をかける》《青い翼》《白、黒、金》などの作品の分析から、クノップフがイメージの意味を固定しない工夫をし、むしろイメージ間の相互関係(コレスポンダンス)を軸に意図的に暗示を創り出そうとしていることを明らかにした。
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