研究課題/領域番号 |
21K00173
|
研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
木下 京子 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (60774560)
|
研究分担者 |
山口 隆介 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 主任研究員 (10623556)
三本 周作 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 研究員 (40899621)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 神仏分離令 / 廃仏毀釈 / 興福寺 / 海外流出 / 売立目録 / 仏像 / 仏具 / 伎楽面 |
研究実績の概要 |
2022年度はボストンとフィラデルフィアを訪れ、仏像・仏具・アーカイヴス調査を実施した。 ボストンに所在するハーバード大学付属美術館では、興福寺から流出した「聖観音立像」・伝快慶作「阿弥陀菩薩像右手」・伝定慶作「菩薩頭部」・「増長天像」(1075年頃)・「四天王像」・「地蔵菩薩立像」などの仏像と伎楽面「迦楼羅」「酔胡従」、「南無仏太子立像」、「阿弥陀如来坐像」および仏具を調査し、図書館で作品に関連する書類や写真を調査した。ボストンでは1890年代から1930年代後半まで松木文恭と山中商会が中心となり日本の美術工芸品の売立が行われたが、神仏分離令と廃仏毀釈運動の影響もあってか有名寺院や流出元不明の仏像や仏画、仏具も売立てられたことから、ハーバード大学付属図書館およびボストン美術館付属図書館において、売立目録を可能な限り調査した。 フィラデルフィア美術館では、興福寺旧蔵の「文殊菩薩坐像」をはじめ、東大寺旧蔵と推定されている伎楽面など仏像・仏画・仏具の悉皆調査を行った。同美術館には奈良県葛城郡に所在した勝福寺の堂宇が移築されており、その経緯も併せて調査することになった。 神仏分離令や廃仏毀釈運動の影響が大きかったとはいえ、興福寺の仏像や勝福寺の堂宇がハーバード大学やフィラデルフィア美術館に売却された販売経路も調査している。アーカイヴス調査より、日本からアメリカの業者に仲介した業者が一部判明した。興福寺の寺宝がどのように流出してその業者に行きついたのか、調査を継続する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため2021年度は海外渡航できず、日本国内のアーカイブス調査も進めることができなかった。さらに円安が進み、アメリカでの調査期間や調査地の数を減らさなければならず、次回の調査地と調査期間、調査対象については十分な検討が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点においては、ハーバード大学付属美術館とフィラデルフィア美術館に収蔵されている仏像・仏具・伎楽面について、2022年度に実施した調査をもとに研究を深化させる。また資料研究も引き続き行う。 今後、調査を実施する美術館だが、現時点では中西部のシカゴ美術館とミネアポリス美術館に絞り、次年度に訪問することを検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の延長を申請し、次年度に渡米することを計画している。具体的には、ハーバード大学付属美術館とフィラデルフィア美術館が所蔵する仏像と関連するコレクションを持つ、シカゴ美術館とミネアポリス美術館で、仏像・仏具・アーカイヴス調査を実施したいと考えている。しかしながら、仏像調査の場合、美術館の展示室に陳列されていると詳細な調査ができないため、調査対象の仏像の陳列時期や陳列期間など展示計画について先方に相談しなければならず、その交渉に入っている。
|