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2023 年度 実施状況報告書

戦後美術における社会思想・社会運動と口述史の研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K00174
研究機関二松學舍大學

研究代表者

足立 元  二松學舍大學, 文学部, 准教授 (40532487)

研究分担者 中嶋 泉  大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (30737094)
加治屋 健司  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70453214)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード現代美術 / オーラルヒストリー / メディアアート / ビデオアート
研究実績の概要

2023年度にインタビュー調査を行ったのは、道下匡子と沖啓介である。
道下匡子(1942-)は樺太豊原市生まれの執筆家で、1960年代から米国に留学、国連本部に勤務しながら滞在し、そのときのグロリア・ステイナムらとの交流から、女性解放運動の理論書などを翻訳し日本に伝えた。帰国後アメリカン・センターに勤めていた道下はジョージア・オキーフを日本に紹介するなどアートとのかかわりも深かった。このインタヴューでは、日米の美術交流について述べてもらうとともに、これまでほとんど詳細が明らかになっていなかった道下自ら手がけた初期ヴィデオアートの作品制作について詳しく述べてもらった。
沖啓介(1952-)は、メディア・アーティストとしてユニークな仕事をしてきた。第1回のインタビューでは主に、生い立ちから、先祖の沖冠岳・沖冠嶺のこと、音楽と美術との出会い、桜町高校で体験した高校生運動、バンド活動、多摩美術大学への進学、李禹煥ゼミ、田村画廊など神田にあった画廊のこと、シュルレアリスムへの考えを聞いた。第2回は、多摩美術大学卒業後の1970年代後半以降の活動についてうかがった。日韓の若い作家たちの協働によって開催された「七人の作家 / 韓國と日本」展(1979年)や、田村画廊・真木画廊とのかかわり、ときわ画廊などで開催した個展・グループ展と作品の変遷、六本木のアートスペースNEWZやビデオギャラリーSCANについて、そして90年代前半まで居住していたニューヨークでの活動などをお聞きした。第3回は、93年に制作した《ブレイン・ウェーブ・ライダー》のこと、その前段階に何があったのか、90年代の文化状況についてうかがった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

現在まで5名のインタビュー調査を実施した。インタビュー自体は多くて3日間であるが、実際には、それぞれのインタビューのために、事前と事後の膨大な作業がある。まず、国会図書館や専門の美術館図書室などで綿密な準備調査を行っている。著作、関連文献などを収集し、読み込む時間が必要とされる。さらに、インタビュー後には書き起こしの確認、話者による校正に、事前調査の数倍の時間を要する。
時間の短縮化が課題であるが、同時代の人の話し言葉をそのままオーラル・ヒストリーに残すことはできない。間違いがないか確認すること、話者を含めて誰かの尊厳を傷つけていないか確認することなど、かなりの注意を要する仕事でもある。

また、これまで行ったインタビューの書き起こし、今後のインタビュー候補者の選定を行った。
研究協力者を含めた会合を、9月17日(二松学舎大学)、3月17日(東京大学)で実施した。オーラル・ヒストリーの限界と可能性について話した。

今後の研究の推進方策

インタビュー対象の選定として、1970年代から90年代の美術を語ることができる方々に焦点をあてることになるだろう。もはや1960年代を語ることができる方々はほとんどいない。70年代の文化においては、学生運動とその余波、国際化、コンピュータをはじめとするテクノロジーの進歩、美術にとどまらない他領域の文化の交錯について、インタビューの質問項目に盛り込み、美術史を更新していく。すでに忘れられてしまった事柄、今まで知られていなかった事柄を、明らかにしていきたい。
オーラル・ヒストリーをデジタルデータとしてオンライン上で公開するだけでは、資料保存という観点からの懸念もある。印刷製本したものを寄贈することも進めていく。

次年度使用額が生じた理由

インタビュー調査の準備作業と事後作業に多くの時間を取られたため、十分な数の調査を実施できなかった。
今後は、3件程度のインタビュー調査を予定している。特に事後作業の時間短縮のための方法を探り、インタビュー公開までの効率的な方法を確立したい。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (7件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 「「女性と抽象」展からはじまる」2023

    • 著者名/発表者名
      中嶋泉
    • 雑誌名

      『現代の眼』

      巻: 638号 ページ: 14-17

  • [学会発表] “When Collectivism Cannot be Formed: Women Artists and Feminism in Japan in the 1960s and 1970s”2024

    • 著者名/発表者名
      Isumi Nakajima
    • 学会等名
      Annual Conference of Association for Asian Studies
    • 国際学会
  • [学会発表] 「抽象と女性」2023

    • 著者名/発表者名
      中嶋泉
    • 学会等名
      「抽象と女性」展関連イベント、東京国立近代美術館
    • 招待講演
  • [図書] The (Im)possibility of Art Archives: Theories and Experience in/from Asia2024

    • 著者名/発表者名
      Kajiya, Kenji.
    • 総ページ数
      356
    • 出版者
      London: Palgrave Macmillan
  • [図書] 『この国(近代日本)の芸術――〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』2023

    • 著者名/発表者名
      中嶋泉(共著)
    • 総ページ数
      852
    • 出版者
      月曜社
  • [図書] 『増補改訂 境界の美術史 ─「美術」形成史ノート』2023

    • 著者名/発表者名
      中嶋泉(解説)
    • 総ページ数
      576
    • 出版者
      筑摩書房
  • [図書] 『絵画の解放 カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化』2023

    • 著者名/発表者名
      加治屋健司
    • 総ページ数
      362
    • 出版者
      東京大学出版会
  • [図書] (Im)Possibilities of Art Archives: Theory and Experience in/from Asia2023

    • 著者名/発表者名
      加治屋健司
    • 総ページ数
      442
    • 出版者
      London: KCL Publishing House
  • [図書] 『新しい女は瞬間である 尾竹紅吉/富本一枝著作集』2023

    • 著者名/発表者名
      足立元(編著)
    • 総ページ数
      365
    • 出版者
      皓星社
  • [図書] 『アナキズム美術史 日本の前衛芸術と社会思想』2023

    • 著者名/発表者名
      足立元
    • 総ページ数
      478
    • 出版者
      平凡社
  • [備考] 日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴ

    • URL

      https://oralarthistory.org/

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公開日: 2024-12-25  

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