研究課題
基盤研究(C)
本研究は、1980年から1993年にヨーロッパの現代美術を日本で先駆的に紹介した画廊「かんらん舎」の活動が、国内のみならず国際的な美術史の文脈においてどのような意義を持っていたかを検証した。とりわけ「展示空間」が重要性を持つに至った過程を、具体的な事例に基づきながら明らかにした。「空間」は現代美術のインスタレーション作品、特にドイツの戦後美術に共通する主題であり、それらは世界に対する人間の認識を問うものであったことも判明した。
美術史
一般的に美術画廊は作品の売買の場所として周縁的な存在ともみなされる傾向にあるが、現代美術画廊の足跡を辿った本研究によって、展覧会を通して国境を越えた美術交流を促進し、作家の表現の可能性を広げる場を提供する、という画廊の重要な側面が改めて認識できた。戦後から現代に至る画廊の役割が見直されるなかで、ヨーロッパをはじめとする海外の美術と日本の接点となったかんらん舎の活動を辿る本研究は、美術における国際交流史の観点からも学術的意義があったと考えられる。