研究課題/領域番号 |
21K00177
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研究機関 | 愛知産業大学 |
研究代表者 |
杉山 奈生子 愛知産業大学, その他の研究科, 教授(移行) (30547493)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アントワーヌ・ヴァトー / フランス美術 / ピュグマリオン神話 / 生動性 / 雅宴画 / 画中彫刻 / マテリアリティ / 18世紀 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、フランスのアントワーヌ・ヴァトー(1684-1721)が描いた雅宴画(フェート・ギャラント)の解釈を、画中の生きているかのような裸婦彫刻モティーフを軸として、作品自体とともに当時流行していた「ピュグマリオン神話」をとりまく社会的・文化的コンテクストからの資料を用いて試みるものである。 具体的には、ヴァトーによる新たな絵画ジャンルとしての雅宴画の創生と、彼の時代にとりわけピュグマリオン神話が諸芸術の題材となった現象を結びつけ、これらが、制作者であるヴァトーおよび注文主や受容者の芸術愛好に関わる同じ背景から生じていることを浮き彫りにする。そして、作品に描かれた彫刻モティーフに対するヴァトーや美術愛好家の眼差しを通して、雅宴画の主題解釈を導くとともに、美術愛好の在り方を提示し、美術が、それまでの政治や宗教の公的プロパガンダから、親密で私的な愛好としての存在意義を増していった、18世紀フランス美術史・文化史の近代化への一端を明らかにするものである。 本研究の計画は、次の①②③をもとに遂行された。計画①として、ヴァトーが雅宴画に女神の彫刻を描き込んだ生成過程を彼自身に関するテクストをもとに調査した。計画②として、18世紀初頭フランスの社会的・文化的コンテクストから探求した。当時のピュグマリオン神話を題材とした文学、演劇、絵画、彫刻、サロン文化や芸術批評、芸術愛好等に関する文献を精読した。また、画中の裸婦彫刻像は、生々しい裸婦彫刻を描いた古代彫刻版画集の流行と同じ背景を共有し、愛で愉しむ対象としての意味合いも持ち合わせるが、ピュグマリオン神話の流行というコンテクストからも、より明快な論拠を提供することが可能であるという申請者の推測を検証した。計画③として、海外の美術館での調査は実施できなかったが、絵画・版画のデータベース、作品目録および日本国内の美術館での調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「5.研究実績の概要」で記述した研究計画①②③について、計画初年度である令和3年度に予定していた①②を遂行し、その研究成果を研究論文にまとめ、共著として公刊したため。
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今後の研究の推進方策 |
「5.研究実績の概要」に記した研究計画①②を継続発展させる。さらに研究計画③について、令和3年度は、新型コロナウィルス感染予防による渡航制限等のため、海外調査の実施が困難であったが、今後は、渡航制限等の様々な状況に配慮しながら、可能であればフランス等での現地調査を実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に予定していた海外での現地調査を、新型コロナウィルス感染予防による渡航制限が発生し、実施することができなかったため。次年度以降、渡航制限等の状況に十分配慮しながら、可能であれば、フランス等での現地調査を実施する。
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