研究課題/領域番号 |
21K00182
|
研究機関 | 大阪芸術大学 |
研究代表者 |
河田 昌之 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (20712061)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 土佐派 / 住吉派 / 板谷派 / やまと絵 / 絵所絵師 / 絵所預 / 御用絵師 |
研究実績の概要 |
本研究は、江戸時代における宮中の絵所預や幕府の御用絵師としての職分を担った住吉派や板谷派を含めた土佐派の活動について、個々の絵師の作品制作を通して土佐派の職掌の実情を具体的に明らかにし、美術史における土佐派の意義を考究することを目的とする。この目的を達成する手段として、江戸時代中期以降の土佐派絵師による公儀の絵画御用を把握することに主眼を置いて、絵所預と御用絵師に大別し、京都における絵所預としての活動と江戸幕府や地方の藩における御用絵師としての活動を、(1)寺社における縁起絵巻の制作と活動の背景(2)模本制作とその活用(3)行事や有職故実の絵画制作における古画の応用の三点に絞って考察することとした。この研究方法は、絵所預として重要な役目である内裏造営の襖絵制作に関しては先学の研究があるため、本研究では深く立ち入ることをせず、これらに比して研究途上にある内裏造営以外の作画活動を対象にし、土佐派の基礎的な作画からその活動を捉え、職掌の考察に結びつけるためである。 こうした研究計画のうち、寺社と美術館、博物館、個人所蔵者での作品調査はコロナ禍によって縮小せざるを得なかったが、調査で得られた情報や、本研究に先行して行ってきた土佐派の調査で収集した資料とを併せ、研究代表者が館長を兼務する和泉市久保惣記念美術館の特別展で119点の作品を展示するとともに、特別展図録の執筆を担当した(令和3年度特別展「土佐派と住吉派 其の二 ーやまと絵の展開と流派の個性ー」)。その特別展では江戸時代に活躍した土佐派、住吉派、板谷派の代々の当主36名のうち25名を取り挙げることで宮中の絵所預や幕府の御用絵師の作品を比較した。それによって絵画表現や画面構図、主題の選択の諸点での基礎資料が得られ、上記(1)から(3)に繋げる道筋を作ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響で作品調査が制限された箇所が少なからずあり、また感染予防の観点から他所への移動を控える全国的な行動抑制により、自主的に調査を延期せざるを得なかったことで、当初予定していた作品調査が計画通りに進められなかった。この間は、先行調査のデータ整理等に当て、調査再開の準備をおこなった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初に計画した(1)寺社における縁起絵巻の制作と活動の背景(2)模本制作とその活用(3)行事や有職故実の絵画制作における古画の応用の三点を調査・研究の主眼にして、京都における絵所預と江戸幕府や地方の藩における御用絵師それぞれの活動を考えるために、京都と大阪の寺社や作品がまとまって残っている四国ほかの地方の博物館等を対象に調査研究を進める予定である。コロナ禍の状況を判断し、当初の計画を修正して研究を進めることも想定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、感染予防策の観点から、計画していた作品調査の延期や縮小を余儀なくされたことにともない、初年度計上した旅費等に大幅な残が生じた。こうした状況のなかで、調査を終えた資料とともに、先行して調査した資料の整理を行なった、2年度は新型コロナ感染症の状況を見ながら、調査を進められる見込みであり、初年度の残も組み込んで、2年度の作品調査と研究に取り組みたい。
|