研究課題/領域番号 |
21K00185
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
丸山 士郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (20249915)
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研究分担者 |
宮田 将寛 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 専門職 (90737503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 乾漆技法 / 脱活乾漆造り / 木心乾漆造り / 仏像 / X線断層写真 / CT |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の仏像技法である脱活乾漆造り、木心乾漆造り、木彫に乾漆併用技法という漆を素材に用いる技法に関する研究である。この技法は主に奈良時代に用いられたもので、その作品の多くは日本彫刻史上の名品という評価を得ているが、現存作品が少ないうえ、破損箇所からしか内部を見ることができない。従来のX線写真では、内部の木組みや心木、乾漆部分の状態の詳細を知るのは困難であった。本研究では文化財用のX線断層写真(CT)を用いて各技法を分析し、乾漆造りの木組みや麻布の大きさや貼り付け方法、心木の彫刻の状態、木屎漆の塑形方法や組成などを明らかにする。 令和3年度は、東京国立博物館開催の特別展「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」に出品された、奈良・聖林寺の十一面観音菩薩立像のCT撮影を実施した。同像は木心に木屎漆で塑形する木心乾漆造り技法が用いられ、日本を代表する仏像で国宝に指定される。木心や乾漆の様子などを確認し、展覧会場や展覧会サイトでその成果を紹介した。 藤井寺主催の「ふじいでらカルチャーフォーラム 国宝 葛井寺千手観音菩薩坐像は見た ふじいでらの歴史」で、「葛井寺千手観音菩薩坐像のCTスキャン」をテーマに講演をした。大阪・葛井寺の千手観音菩薩坐像は、漆で塗り重ねた麻布の上に木屎漆で塑形する脱活乾漆造りの作品である。同像の麻布の貼り重ねや木屎層の様子について、製作工程に沿って講演をした。 東京国立博物館開催の特別展「聖徳太子と法隆寺」出品の奈良・法隆寺の行信坐像(脱活乾漆造り)、大阪・安福寺の夾紵棺の断片のCT撮影も実施した。夾紵棺は、脱活乾漆造りのように布を漆で貼り重ねてつくられた棺で、仏像の乾漆技法を考察する上で重要な資料である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は研究期間の初年度で、CTデータの分析用ソフトウエアを導入した。これによって分析のためのデータ加工が容易になり、作成したデータを保存することができるようになった。また、データ表示用に大型のモニタも導入した。それらによって分析作業が効率的に進めることができる。 CT撮影は、聖林寺の十一面観音菩薩立像、奈良・法隆寺の行信坐像について実施した。法隆寺伝法堂の阿弥陀如来の脇侍像についても実施予定であったが、特別展「聖徳太子と法隆寺」が奈良国立博物館で開催された際にCT撮影を実施したので、そのデータの提供を受けることになった。また、上記作品のカラー画像の撮影も行い研究資料の充実を図った。 以上のように本研究は順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度にCT撮影した作品、およびこれまでに撮影済み作品のデータの分析をすすめるとともに、未実施の作品についてのCT撮影を行う。CT撮影が実施できない作品については目視による調査を行う。作品調査のほか、正倉院文書を中心とした文献調査も行い、乾漆造り技法の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した機器類が、予定よりも低額で購入できたため残金が生じた。令和4年度に文房具類を購入する。
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