研究課題/領域番号 |
21K00196
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研究機関 | 開智国際大学 |
研究代表者 |
北浦 寛之 開智国際大学, 国際教養学部, 講師 (20707707)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 東映 / 映画製作 / 撮影所 / 映画産業 / 2本立て / 配給 / 興行 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本映画の黄金期とされる1950年代から、20年にわたり映画会社間の映画配給業績でトップを維持し続けた東映に注目し、京都撮影所を中心に大量の作品を生み出し続けた映画製作の内情を探るものである。東映は、映画の大量生産をおこなうことで、他社に先駆けて、1954年より週替わりを基本とする新作2本立て配給を開始し、常態化させていった。こうして大量に製作された東映作品群は圧倒的な人気を誇り、その時代の大衆文化の象徴的な存在として機能していく。こうした東映作品の重要性を鑑み、それらの映画がどのように生み出されてきたのか、またいかにして東映は量産体制を築くに至ったかという量産の背景に迫っていくことを目的としている。 2021年度は、本研究課題の初年度であるが、依然として続くコロナ禍の影響により、資料調査に支障が出た。それでも、東映の製作の内情を探るために、社内報「とうえい」や作品の台本(記録係の書き込みのある撮影台本)の調査を少しずつ進めていった。今後は、このあたりの調査をより進展させることが重要になってくると考える。また、東映の製作に焦点を絞りながらも、それと関連する知見を獲得することが必要であると感じ、以下のような調査も遂行していった。 ①上述の通り、製作はその後の作品の配給や、興行といった映画の生産から消費に至る工程と密接に関係し、影響を受けるものでもあるため、製作にとどまらず、配給や興行の状況にも目を向けて、調査をおこなっていった。②東映の製作-配給-興行を取り巻く状況、他の映画会社との競争を含めた関係性などを理解するために当時の映画産業の実情を調査していった。 こうした調査の中でも、東映が週替わりの新作2本立て配給を開始するに至った背景と、東映を取り巻く産業的な実情について詳しく検討し、2022年度には論文としてまとめ公開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題初年度においては、依然としてコロナ禍の影響を受けて、資料調査を推進させることが難しかった。そのような状況下でも、日本映画黄金期の1950年代の東映の企業戦略や製作体制が詳しくわかる資料、実際に製作現場で、記録係が監督の指示などを書き込んで利用した撮影台本など、研究課題の核心に迫る資料を進めながら、追究すべき課題を見つけ出して、その解明に取り組んでいった。すなわち、それは、映画の製作を配給や興行との関連で詳しく考察すること、また、東映が週替わりの新作2本立て配給を実施するに至る過程として、東映を取り巻いていた産業的な流れを明らかにすることを目指したものであった。そうした方面でも研究調査を遂行し、論文としてまとめ、2022年度には公表できる予定だ。コロナの影響がありながら、そのなかでも、研究を着実に前進させられていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当面の目標としては、本研究課題の遂行にあたり必要だと判断された、敗戦後の1940年代後半から1950年代中頃までの映画の製作、配給、興行の流れと関係性について詳しく検討することであり、それについて論文にして発表する予定である。そのことは、研究課題として注目する映画黄金期=量産期がどのような経緯で構築されたのかという問題を明らかにするものであり、研究の大きな前進が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、当初の予定よりも、物品費での支出が抑えられたことが大きく、また、その他に該当する支出も予想に反して、少なかったことが挙げられる。 2022年度は、物品費では、必要図書購入やDVD等の映像ソフトの購入を中心となり、旅費においては、主に東映京都撮影所およびその作品群に関する資料調査のため、関西方面への出張が多くなる予定である。
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