研究課題/領域番号 |
21K00197
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
福田 淳子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (70218923)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 川端康成 / 文学 / 映画 / テレビドラマ / 演劇 / オペラ / エンターテインメント / アダプテーション |
研究実績の概要 |
川端康成作品を原作とする舞台・映画・漫画・ラジオドラマ等について各種データベースを活用して情報を更新し、早稲田演劇博物館、松竹大谷図書館、国立映画アーカイブ等に収蔵されている台本やシナリオ、プログラムや関連雑誌等の資料収集を引き続き行った。 2023年度、静岡県は文化庁により「東アジア文化都市2023」に選定され、その関連行事の一つ、伊豆文学祭記念事業として静岡県舞台芸術センター=SPACは多田淳之介脚本・演出による『伊豆の踊子』を制作、静岡芸術劇場を拠点に静岡県内5か所―下田・修善寺・浜松・沼津―において上演した。本作は映像を用いた観光演劇という新機軸を打ち出し、さらに小説の舞台である伊豆周辺での上演という点で、本課題の調査対象として時宜を得た作品であると判断し、5か所での公演すべてを実見、SPACの協力を得て各公演でのアンケート調査を実施した。公演の公式パンフレットに「アダプテーションの進化あるいは深化―多田版『伊豆の踊子』」のタイトルで寄稿した。関連行事として開催された河津ループ橋特設会場での上演も観劇し、演出家や俳優によるトークイベント等にも参加して制作過程の情報等も積極的に収集した。 今年度の調査成果として、『ブックレット 近代文化研究叢書 17 川端文学におけるアダプテーション―「伊豆の踊子」の翻案を中心に』(昭和女子大学出版会、2024年3月)を刊行した。川端の作家としての創作方法について論究し、作家自身のみならず社会にも影響力を持ち続け、名作に成長した「伊豆の踊子」の意味を探り、アダプテーションの具体例として映画化6作品のうちの3作品と、多田淳之介脚本・演出『伊豆の踊子』について言及した。 その他、茨木市立川端康成文学館主催による令和5年度川端康成文学館第37回文学講座(前期)第1回を担当、「川端康成と囲碁―小説『名人』を中心に―」のタイトルで講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度から手がけていたブックレット『川端康成におけるアダプテーション―「伊豆の踊子」の翻案を中心に』は、川端原作のアダプテーション作品が多くある中でも複数のジャンルにわたる複数のアダプテーションが行われている「伊豆の踊子」を中心に据え、今年度の静岡県舞台芸術センター=SPAC制作、多田淳之介脚本・演出による新たな観光演劇『伊豆の踊子』の調査を組み込む形で、予定どおり刊行することができた。 観光演劇作品の調査は急遽、組み入れたものであったため、コロナ禍の影響で遅れていた海外での調査については、期間延長申請により2024年度に実施する決定をした。 茨木市立川端康成文学館主催による2023年度川端康成文学館文学講座(前期)において「川端康成と囲碁―小説『名人』を中心に―」のタイトルで予定どおり講座を担当した。対象作品「名人」は、川端自身による新聞連載の囲碁観戦記をもとに執筆された小説であり、川端の小説作法に則ったアダプテーション作品と言える作品でもある。このことはブックレットにおいても言及することができた。 以上の成果から、おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
国内においては、2023年度に新たに調査項目に取り入れ、注力して行った多田淳之介脚本・演出による『伊豆の踊子』に関して、アンケートの集計作業が残っているため、アルバイトを雇って入力作業を進める予定である。集計後は分析を行い、論文にまとめたい。また、ブックレットに収録できなかった3作品の映画『伊豆の踊子』についても、引き続き調査を進め、論文にまとめたい。 海外においては、コロナ禍の影響により実現できなかった調査を進める。パリ在住の坂井セシル氏(パリ・シテ大学名誉教授)の協力を得て、舞台作品の調査を行う予定である。また、中国・韓国における舞台作品や映像作品についても、可能な限り調査を進めたい。 調査結果に基づく論文化を積極的に行い、最終年度のまとめとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に急遽、新たに取り組むことになった多田淳之介脚本・演出による観光演劇『伊豆の踊子』の調査に注力したため、海外での調査については1年間の期間延長申請を行い、そのための費用を残している。 2024年度は、フランス(パリ)・中国・韓国での調査を実施し、旅費のほか、通訳や翻訳にかかる費用等が発生する予定である。
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