研究課題/領域番号 |
21K00199
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
後藤 隆基 早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, 助教 (00770851)
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研究分担者 |
児玉 竜一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10277783)
神山 彰 明治大学, 文学部, 名誉教授 (20287882)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 倉林誠一郎 / 制作者 / 戦後演劇史 / 新劇 / 興行 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、倉林誠一郎旧蔵資料のうち、日記(以下、倉林日記)の整理・調査・考証を行った。戦後、倉林が本格的に演劇活動を開始する契機となった俳優座入座後の1947年以降、俳優座劇場の開場等を経て、日本演劇代表団事務局長として訪中した1957年までの10年間の日記をデジタル化し、研究代表者・研究分担者間で日記のデータを共有可能な体制構築を行った。そのうえで、倉林日記の翻刻作業を順次進めており、現在、劇団が有限会社となった1950年までの翻刻を終え、その検証に着手している。 あわせて、倉林日記の記述と同時代の演劇界の動向や社会状況等を対照すべく、同時代の新聞・雑誌および倉林の著作をはじめとする関連文献の調査を行った。とくに、倉林は劇団運営の傍ら、戦後演劇の興行様態や経済的側面に関して多数の文業をのこしており、それらの調査・考証は、日記を分析するための前提作業として重要であるため、従来研究対象とみなされてこなかった倉林の「制作者」としての事績を整理し、再評価する方法の検討を進めている。そうした作業をふまえて、倉林日記自体の多角的な考証へと展開していく。なお、書籍以外の倉林の文業にかんするデータはリストを作成し、全体像を一望できる状態にする。 敗戦直後の演劇界、とくに倉林が支柱的役割を担った新劇界は大きな変化にさらされており、同時代の社会状況の変容をとらえ、政治や経済と興行との関わりを検討することは必須の課題である。隣接領域の文化状況も調査しながら、倉林が参画した戦後日本文化の形成過程を明らかにすることもめざす。 今後は、資料保存の観点からも倉林日記のデジタル化のペースを上げるとともに翻刻も進めていく。くわえて、倉林の事績にかんする調査・考証等は随時、学会での発表や論文化を通して公開していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度においては、倉林誠一郎旧蔵資料のうち、日記(以下、倉林日記)の整理・調査・考証を中心に進めた。時期としては、倉林が本格的に演劇活動を開始した俳優座入座後の1947年から、日本演劇代表団事務局長として訪中した1957年までの10年間の日記をデジタル化し、そのうえで、倉林日記の翻刻作業を順次進めている。令和3年度には1950年までの翻刻を終え、その確認・検証作業に着手している。研究代表者が、倉林日記を所蔵する早稲田大学演劇博物館に所属していたこともあり、定期的な資料閲覧・整理・デジタル化・翻刻等を行えたため、概ね順調に作業を進めることができた。デジタル化した倉林日記のデータを研究分担者にも共有することで、個々に資料の検討が可能となる体制を構築しており、概ね順調に進展していると考える。 倉林日記の記述と同時代の演劇界の動向や社会状況等を対照すべく、同時代の新聞・雑誌および倉林の著作をはじめとする関連文献の調査を行った。とくに、倉林は劇団運営の傍ら戦後新劇の興行様態や経済的側面に関して多数の文業をのこしており、それらの調査・考証は、日記を分析するための前提作業として重要であることにかんがみ、従来研究対象とみなされてこなかった倉林の「制作者」としての事績をその著作からまず整理し、再評価する方法の検討を進めている。 次年度以降、資料保存の観点からも倉林日記のデジタル化のペースを上げるとともに翻刻も進めていく。 なお、一次資料や同時代紙誌、文献等の調査を進める上で、それらの関連記事の抽出・分析も併せて実施し、それらのリスト化を行うことによって、今後の研究基盤の構築も視野に入れた活動を企図している。そうした調査・分析過程についても、未だ論文化には至っていない成果の公開をめざしている
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度においては、前年度に引き続き倉林日記の整理・調査・考証を行う。1958年以降の日記のデジタル化を進めるとともに、デジタル化が済んでいる1950年以降の日記の翻刻作業を順次進めていく。倉林日記の記述と同時代の演劇界の動向や社会状況等を対照するため、同時代紙雑誌および倉林の著作をはじめとする関連文献の調査も継続して行っていく。また、進行状況をみながら、一度翻刻した部分を日記原本と照合して内容を確認する作業も適宜行う予定である。 なお、令和4年度から研究代表者の所属先が変わったため、前年度に比較して定期的な資料閲覧・整理・デジタル化・翻刻等の作業を行うことがやや困難になったが、環境の変化を補完すべく、日記のデジタル化を優先して進めることで、資料所蔵機関に直接赴かずとも資料の調査・整理・翻刻等を行えるよう作業手順の見直しを図る。 そのうえで、倉林日記や倉林の著作、同時代資料、先行研究を精査することによって、倉林の「制作者」としての事績、戦後新劇の興行に関わる諸課題、日中文化交流のありようなどについて検討を進めていく。 なお、一次資料や同時代紙誌、文献等の調査を進める上で、それらの関連記事の抽出・分析も併せて実施し、それらのリスト化を行うことで、今後の研究基盤の構築も視野に入れた記録の整理を企図している。 さらに、倉林を知る演劇関係者にヒアリングを行い、倉林の実像についての調査も行う。くわえて、倉林が講究しつづけた同時代の文化政策と興行の関係について、その思索を現代の状況に照応すべく、2012年に施行された劇場法から10年を数える本年度における文化活動の今日的課題を検討する機会も設けたい。 その他、前年度までに調査・分析を進めた作業について、随時論文化や口頭発表等を行い、公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に実施予定だった資料のデジタル化と翻刻等の作業について、当初想定していた研究補助者の確保が難しかったため、次年度の研究補助者を雇用する人件費にあてる予定である。
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