研究課題/領域番号 |
21K00208
|
研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
井上 登喜子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (90361815)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 女性指揮者 / ジェンダー・ダイバーシティ / オーケストラのジェンダー不均衡 / レパートリー形成 / 国際コンクール |
研究実績の概要 |
本研究は男性中心組織であるオーケストラを対象とし、女性指揮者の参画がオーケストラに新たな文化的価値を創出するかについて、レパートリー形成の要因分析にジェンダー観点を加えて検証するものである。今年度は、(1)先行研究のサーベイ、(2)国際指揮者コンクール情報の収集、(3)これまでに構築した定期演奏会データベースの2001年以降のデータの追加・更新に取り組んだ。 第一に、先行研究サーベイでは、欧米の女性オーケストラ及び女性指揮者の活動と役割に関する歴史的研究、女性指揮者のエスノグラフィー調査、ジェンダー政治学的研究の成果と蓄積について整理した。第二に、欧州、米国、日本で開催されてきた国際指揮者コンクールを対象に、受賞者・入賞者に関する情報収集に着手した。なかでもパリで開催された女性限定の国際指揮者コンクール(La Maestra主催)については、フランスの新聞各紙の報道記事の調査も併せて実施した。第三に、これまでに構築してきた各国のメジャー・オーケストラの定期演奏会データベースの内、ニューヨーク・フィル、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、NHK交響楽団の2001年以降の演奏会データを収集し、更新作業を進めた。 上記の演奏会及び指揮者情報を反映したデータベースを用いて、指揮者とレパートリー導入に関する分析を行った。分析結果の一部は、国際音楽学会スタディグループ 「グローバル・ヒストリー・オブ・ミュージック」第1回大会(2021年10月、オンライン実施)で報告し、研究論文としてまとめ、査読付き学術ジャーナルに投稿した(1件は国内学術誌に掲載、1件は投稿中)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況としては、下記の通り、計画を一部変更したが、おおむね順調に進展している。 当初は一年目(2021年度)に、女性を常任指揮者とする/したヨーロッパ、米国、日本のオーケストラの演奏会情報の調査を実施する計画だったが、この計画には現地調査を含んでいたため、コロナ禍下での実施は難しいと判断し、次年度以降に延期することとした。その代わりに、当初二年目(2022年度)に計画していたメジャー・オーケストラの定期演奏会データ更新作業を前倒しして実施し、十分な成果を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は以下のとおりである。第一に、前年度に実施を見送った女性指揮者を常任指揮者とする/したオーケストラの調査および演奏会情報の収集を推進する。第二に、指揮者情報を反映したデータベースを用いて、指揮者とレパートリー形成に関する二つの分析を行う。ひとつは、指揮者のダイバーシティとオーケストラ・レパートリーの新たな価値創出の関連の検証、もうひとつは、女性指揮者が、能力や資質が等しい場合に、男性と平等の機会が提供されてきたかの検証である。それぞれの研究成果は、国際音楽学会第21回大会(IMS2022)と国際音楽学会東アジア部会(IMSEA2022)で報告予定(採択済)である。 その後の計画としては、女性の常任指揮者の活動にフォーカスして、男性中心組織であるオーケストラへの女性指揮者の参画が、オーケストラの新たな価値創出に貢献するかについての事例研究、ならびに実証研究に取り組む予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度に使用予定だった海外旅費は、国際学会の全面オンライン開催への変更と、コロナ禍下での海外調査の延期のために支出が不要となった。また、海外調査のために購入予定だったパソコンも購入を延期したため、物品費の支出が不要となった。 上記理由によって生じた「次年度使用額」については、次年度に参加する二度の国際学会(現段階では対面開催を予定している)の海外旅費に充てる予定である。
|