研究課題/領域番号 |
21K00208
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
井上 登喜子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (90361815)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 女性指揮者 / ジェンダー・ダイバーシティ / オーケストラのジェンダー不均衡 / トランスナショナリズム / 音楽家のキャリア形成 |
研究実績の概要 |
本研究は、従来、男性中心組織として運営されてきたプロフェッショナル・オーケストラに、女性指揮者が参画することで、オーケストラの演奏レパートリーに新たな文化的価値が創出されるかについて、レパートリー形成の要因にジェンダー観点を加えて検証するものである。 今年度は、現在構築している国際規模の定期演奏会データベースに、指揮者の性別、出身、キャリアに関する情報と、昨年度収集した国際指揮者コンクールの優勝・入賞情報を変数として加えて、どのような指揮者の「属性」が、既存のレパートリーに変化をもたらすかについての分析を実施した。得られた分析結果の内、特に女性指揮者の曲目選択が新規レパートリーの導入をもたらすとの統計的有意な結果が得られた点は成果と言える。この研究成果については、2022年8月にギリシャのアテネ大学で開催された国際音楽学会第21回大会(The 21st Quinquennial International Musicological Society Congress (IMS2022))にて発表し(発表題目は"Does Conductor Diversity Increase the Diversity of Repertoire in Orchestral Concerts?")、その後、海外ジャーナルに投稿済みである(現在査読中)。 また、女性の指揮者・音楽家・音楽プロデューサーのキャリア形成と芸術的アイデンティティ形成の関わりを、人種・民族・ジェンダー的観点から考察するために、海外研究者による講演会を企画・運営したほか(2022年12月)、米国、ドイツ、ポーランドの研究者との研究交流や、さまざまな世代の日本人音楽家との意見交換をオンラインで実施した。この研究活動は次年度も継続し、研究成果の発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況としては、下記の通り、計画を一部変更したが、概ね順調に進展している。 当初計画では、初年度(令和3年度)に海外と国内の女性指揮者を対象に聞き取り調査を開始する予定だったが、コロナ禍下で実施は難しく、先送りせざるを得なくなった。その部分では遅れが生じているが、これについては、次年度に実施する準備を進めている。 一方、データベースの構築と実証分析に関しては研究が進展し、手応えのある分析結果を得ており、国際学会発表や論文投稿など成果発表にも繋がっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、第一に、当該研究で得られた成果を、書籍(単著と共著)にまとめて公表する予定である。 第二に、コロナ禍のために滞っていた、女性指揮者・女性音楽家への聞き取り調査に着手する。それに基づき、女性音楽家のキャリアと芸術的アイデンティティー形成に関する考察を行い、成果発表に繋げていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
過年度のコロナ禍の影響で海外調査を延期したことにより、海外調査のための旅費の支出の一部、並びに、購入予定だったパソコンの購入の物品費の支出が不要となったことで、次年度使用額が生じた。これについては、次年度に実施予定の海外調査に充てる予定である。
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