研究課題/領域番号 |
21K00230
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
高橋 美樹 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (30403869)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 沖縄 / レコード / 録音 / ディスコグラフィー / 民謡 / 古典音楽 / レコード会社 |
研究実績の概要 |
本研究では沖縄音楽専門レコード会社の活動記録と発売音源を解明するため、沖縄音楽に関する著書、論文、レコード解説書などの文献・録音資料を収集、整理した。2021年度は琉球ツル・レコードのディスコグラフィーを作成し、レコード会社の成立過程とその実態を明らかにした(高橋美樹2022:165-190参照)。特に、録音した曲名、歌手・演奏者、ジャンル、レコード番号、発売年について、目録とレコード盤情報を照合した。結論は下記5点である。 【1】琉球ツル・レコードの制作は1915年平良晨盛が沖縄県那覇市で創業し、時計・貴金属・眼鏡を販売する盛興堂が実施していた。レーベル名は〈琉球ツル〉で、1926年ー1936年にSPレコードを制作した。レコードの販路は沖縄県を拠点に海外へも拡大し、沖縄系移民の需要を見越してハワイへも輸出していた。【2】盛興堂はレコード盤のプレス製造を名古屋のアサヒ蓄音器商会に委託した。歌手は沖縄から名古屋へ遠征し、同蓄音器商会のスタジオで録音した。 【3】確認できたSPレコード207枚の録音曲目は、全349曲52作品(全414トラック)。最も収録の多いジャンルは古典(30.4%)であり、続いて歌劇(26.1%)、沖縄民謡(16.7%)、組踊(10.1%)の順であった。 【4】録音した主な歌手は富原盛勇、多嘉良朝成、多嘉良カナ子、赤嶺京子、玉城盛義、仲泊兼蒲、又吉栄義である。琉球ツルの看板歌手は赤嶺京子(後にマルフク・レコードで活躍する普久原京子)であり、歌劇、古典、沖縄民謡、新民謡、舞踊曲と幅広いレパートリーを持つ人物であった。 【5】琉球ツル・レコードの活用事例として、盛興堂の平良晨盛は1929年8月10日「琉球古典劇研究座談会」で組踊「花売の縁」のレコードを大型蓄音機で再生し参加者に鑑賞させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に関わる調査は順調に進んでいる。 これまで沖縄現地調査で収集したレコード及び目録を整理し、各レコード会社別にデータベース化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.戦前、那覇市に設立された〈ヤマキ・レコード〉の活動記録と発売音源を解明する。 2.1970年代にルポライター・竹中労が制作した沖縄音楽LPレコードと「琉球フェスティバル」(東京・大阪・京都開催)との関連を調査するため、文献・音源を収集し整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】2021年度に実施予定だった沖縄県南風原文化センターの調査を2022年度に変更したため。 【使用計画】1.東京での資料収集と沖縄・八重山諸島調査のための国内旅費に使用する。2.沖縄音楽専門レコード会社の関連書籍に使用する。3.竹中労に関する書籍及びレコード・CDに使用する。
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