研究課題/領域番号 |
21K00233
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研究機関 | 長岡造形大学 |
研究代表者 |
児美川 佳代子 (小松佳代子) 長岡造形大学, 造形研究科, 教授 (50292800)
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研究分担者 |
生井 亮司 武蔵野大学, 教育学部, 教授 (20584808)
笠原 広一 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50388188)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Arts-Based Research / 市民性教育 / 美術教育 / 哲学対話 / アートグラフィー |
研究実績の概要 |
2022年度は、実践的研究に力を注いだ。具体的には、2022年10月18日から12月22日まで、小松と生井が企画した「栃木県小山市Articulation―区切りと生成」という展覧会を栃木県小山市立車屋美術館で、関連した展示を栃木県足利市のギャラリー碧で行った。単なる美術展示ではなく、アーティストが展示することの意味を考察する研究展示である。参加した14人のアーティストは自己批評文を書き、論文と自己批評文を掲載した図録を作成した。11月20日と12月18日にアーティストトーク、11月23日には市民を対象としたワークショップ及びゲストアーティストを交えたシンポジウム、12月3日には市民を対象とした鑑賞会を行った。シンポジウムの記録をまとめた冊子を制作した。 生井は、栃木県益子市で市民とともに哲学対話を2回、大学内でも1回行った。笠原は、国際的なカンファレンスでアートベースリサーチに関する研究発表を行い、東京学芸大学専門職大学院では「世界と/日本と/私の変化を探求する」というプロジェクトを行って研究成果を展示している。小松は、10月22日に第65回教育哲学会研究討議「口承・画像(イメージ)・記憶と人間形成―文化科学的教育学の試み」において、「イメージと人間形成―美術の制作と鑑賞を念頭に置きつつ」と題した発表を行った。発表内容は、2023年度に発刊される『教育哲学研究』第127号及び英語版がオンラインジャーナルに掲載される予定である。また、昨年度の研究成果であるArts-Based Methods in Education in Japanをめぐって、日本認知科学会「芸術と情動分科会」によって記念シンポジウムが開かれ、小松が基調講演、笠原も発表を行った。さらに現在、2023年度発刊に向けて、『アートベース・リサーチの可能性―制作と研究と教育をつなぐ』という本を執筆・編集中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、実践的研究と理論研究とがバランスよく展開したように思う。展覧会と学会発表とを同時に行うことにより、美術以外の研究者がアートベース・リサーチに関心をもって、アーティストトークやシンポジウムに来場してくれたり、展覧会を見てコメントを寄せてくれたりしている。その結果、例えばホーリスティック教育/ケア学会の2023年度大会シンポジウムに小松が呼ばれるなど、他の領域の教育学研究者とのつながりが生じている。美術教育と市民性教育との関係を考える本科研が大きく展開する契機となることが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、本科研の最終年度に当たるため、研究をまとめて発表することに注力する。第一に、現在原稿を執筆している『アートベース・リサーチの可能性―制作と研究と教育をつなぐ』という書籍を出版する。この本には、2022年度行った展覧会に参加したアーティストやワークショップコーディネーター7人も寄稿している。それぞれが自己の制作実践や教育実践について理論的に考察した論文を書いている。第二に、研究分担者とともに全員で国際美術教育学会に発表エントリーをしているので、9月に行われる学会大会で口頭発表を行う予定である。第三に、6月に行われるホーリスティック教育/ケア学会に、小松と生井が参加し、小松はシンポジウム「アートがつつむ実践と研究へ」に登壇し発表する。ここまで2年間の研究で、理論的な研究と実践的研究は十分行ってきたが、美術教育と市民性教育との歴史的な展開にまで考察を広げるため、研究分担者を加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者が作成していた冊子の出来上がりが年度末で、支払いが年度末ギリギリであったため。その金額が当初予定していたものより若干低かったため。次年度は、最終年度であるため研究成果の発表に使用する予定である。
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