研究課題/領域番号 |
21K00235
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
橋本 裕之 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 都市研究プラザ特別研究員 (70208461)
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研究分担者 |
中川 眞 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任教授 (40135637)
関 典子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (30506457)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 被災地芸能 / 動態的保存 / 実践的拡張 / 東日本大震災 / 郷土芸能 / 大槌城山虎舞 / 阪神虎舞 / コンテンポラリーダンス |
研究実績の概要 |
東日本大震災を契機としてコンテンポラリーダンスが被災地の芸能と遭遇する機会が増え ている。2018年より神戸のダンス系NPOの拠点で、岩手県大槌町に伝承される虎舞の担い手 からダンサーが学ぶ機会が定期的に設けられてきた。修得した神戸のグループは半ば自立し、地域の祭礼やイベントに請われて舞う機会が増加している。本研究では、このグループの誕生と成立を、震災が引き起こした新たな文化の生成過程と捉え、東北と関西という文化的脈絡、習得のプロセス、レパートリーの拡張、上演機会などに焦点を当てて、その経緯の詳細な分析を行うことを目的とする。民俗芸能の衰退が全国的に危惧されるなか、本研究はその地域的密着性を相対化する視点を提起するものとして、全国の芸能の今後の継承のあり方に大きな示唆を与えるものと期待される。 だが、2021年度は新型コロナ禍によって、6月に予定していた虎舞ワークショップ、9月に予定していた大槌まつり、2月に依頼されていた全国虎舞フェスティバルがいずれも中止されて、参加調査を実施することができなかった。4月に廣田神社の春祭りで奉納することができたが、以降はしばらく活動することがまったくできなかった。ようやく年が明けて1月は正月三が日に大阪府下のショッピングモール3か所において阪神虎舞を披露して、廣田神社の阪神淡路大震災追悼式でも奉納する機会に恵まれたが、2022年度の活動は全体として低調だった。一方、12月に舞手やスタッフを交えて報告会「虎舞を演じてきて」を実施して、虎舞を演じてきた経緯を振り返りながら、今後の可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ禍によって阪神虎舞の活動じたいがほぼ停止してしまった。実際は6月に予定していた虎舞ワークショップ、9月に予定していた大槌まつり、2月に依頼されていた全国虎舞フェスティバルがいずれも中止されて、参加調査を実施することができなかった。だが、研究会は12月に舞手やスタッフを交えて、報告会「虎舞を演じてきて」として実施することができた。その成果はブックレット『阪神虎舞の誕生―被災地芸能の文化的脈絡の拡張―」にまとめることができた。したがって、調査は停滞気味であるが、研究は順調であるといえるだろう。遅れているという表現が的確かどうかわからないが、新型コロナ禍の影響を受けて、全体として当初の予定を十分に遂行することができていないので、2022年度以降に捲土重来を期したい。
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今後の研究の推進方策 |
参加調査に関していえば、新型コロナ禍次第であるといわざるを得ないが、阪神虎舞のメンバーは定期的に稽古に取り組んでおり、その過程も記録している。阪神虎舞は現在、笛と太鼓の囃子を大槌城山虎舞に提供してもらった音源に頼っており、自前で演奏することができていないので、今後は囃子を強化したいと考えている。また、女性の舞手を擁する虎舞はまったく存在しないため、女性だけが演じる雌虎を実現させたい。一方、阪神虎舞が拠点を置いている新長田において子どもが虎舞を体験するワークショップを予定している。だが、コンテンポラリーダンスとして展開させる試みは依然として取り組めていないので、こちらも今後の課題である。以上、各種のプロジェクトを遂行する過程に同伴して記録を作成することによって、今後の研究を推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍によって現地調査を実施することがまったくできなかった。また、大槌城山虎舞のメンバーを招聘してワークショップを実施することもできなかった。そのため阪神虎舞で使用する道具の製作費等に振り替えた。次年度以降は当初予定していたとおり、十全な参加調査を実施したい。
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