研究課題/領域番号 |
21K00236
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研究機関 | 国立音楽大学 |
研究代表者 |
加藤 一郎 国立音楽大学, 音楽学部, 特別研究員 (60224490)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ショパン / 音楽様式 / 教授法 / 楽譜 / 書き込み / デュボワ |
研究実績の概要 |
国立音楽大学研究紀要第57号に「弟子の楽譜への強弱の書き込みから見たショパンの演奏解釈――カミーユ・デュボワ=オメアラの楽譜の調査を通して――」を発表した。本研究ではデュボワ夫人の全ての楽譜を調査し、先ず、強弱に関連する書き込みの一覧表を作った。そして、それを基に下記の3つの論点から考察を行った。 1.強弱の書き込みが曲全体の構造に関わるもの 2.強弱の書き込みが曲の中の特定の部分の表現に関わるもの 3.強弱の書き込意が特定の音に関わるもの その結果、1についてはショパンが音量の設定を曲全体の構造との関係で均衡性をもって捉える方法を示していた。2については曲の中で個々の部分の表現を効果的に行うことが意図されていた。3については倚音の響かせ方や、フレーズの頂点の表現方法、内声に注意を向ける事などが明らかになった。これらの指示は、ショパンが製版用自筆譜に指示しなかったものであり、彼の音楽の多様性や、彼が曲を出版した後も推敲を続けていたことを示していた。それらの中には《夜想曲》ニ長調作品27-2第45~50小節への大幅な音量の変更も見られ、それは、彼の後期の主だった弟子の楽譜に共通してみられるものであった。また、レッスンの中で咄嗟に思いついたアイデアや、通常は楽譜には記載しない演奏に関する指示等もあり、それらは今後の演奏及び研究に役立つものと考えられる。 また、2022年9月にはパリポーランド歴史文芸協会図書館 Bibliotheque Polonaise de Paris の協力を得て、ショパンの晩年の弟子ゾフィア・ザレスカ=ローゼンガルト Zofia Zaleska nee Rosengardt (1824~1868) の楽譜の撮影を行い、全44冊1000頁にわたる映像資料を入手することができた。昨年の研究成果の一部は朝日カルチャーセンターの講座で発表したことも付記しておく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間1年目はコロナ禍のため、海外調査ができなかった。2年目に当たる昨年度はゾフィア・ザレスカ=ローゼンガルトの楽譜調査を行うことができたため進展はあったが、研究全体としては、やや遅れているのが実態である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はローゼンガルトの楽譜とイェンジェイエヴィチョーヴァの楽譜の調査及び検討を行うつもりである。また、本年7月に韓国ピアノ学会において、研究成果の一部を発表する予定である。
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