研究実績の概要 |
主に3件の研究成果を発表した。 1. 加藤一郎「ルドヴィカ・イェンジェイエヴィチョーヴァの楽譜への書き込みを巡って―ジェーン・スターリングの果たした役割―」国立音楽大学研究紀要、第58集、25-36. 2. 加藤一郎、伊藤文子「カミーユ・デュボワ=オメアラの楽譜への書き込みから見たショパンの音楽様式―変奏及び装飾法に関する書き込みを通して―」日本ピアノ教育連盟紀要、第39号、15-36. 3. Kato Ichiro‘Chopin's Tempo Rubato', Piano Society of Korea, 19. July 2023.(講演) 1.は最終的にショパンの姉ルドヴィカ・イェンジェイエヴィチョーヴァが所持するところとなった楽譜に見られる書き込みについて考察したものである。その書き込みは複数の筆跡からなるが、不詳な者による筆跡の一つは、1843年からショパンの弟子となったジェーン・スターリングの筆跡と酷似しており、書き込みの内容はショパンの音楽様式に精通している者しか行えないものであること等から、スターリングの書き込みである可能性が極めて高いことを推論した。2.はカミーユ・デュボワ=オメアラの楽譜への書き込みの内、変奏及び装飾法に関するものについて考察したものである。この内、重要なものとして、ショパンは同じ曲の同じ旋律に対して、弟子によって異なる変奏を書き込んでおり、これは音楽に対するショパンの即興的な姿勢を示すものと言える。また、ショパンは縦型の弧線を上方隣接音からなる前打音を上声部に伴う和音の前に記すことがあり、これは和音をアルペジオで奏し、最後に前打音と和音の上声部を奏する方法となる。3.は本科研によるこれまでの研究成果を用い、ショパンのテンポ・ルバートについて講じた。
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