研究課題/領域番号 |
21K00241
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
鯖江 秀樹 京都精華大学, 芸術学部, 准教授 (30793624)
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研究分担者 |
利根川 由奈 文教大学, 国際学部, 講師 (90896010)
島村 幸忠 京都芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (10911901)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 抽象芸術 / 具体美術運動 / 戦後日本美術 / ベルギー近代美術 / イタリア近代美術 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦後美術の国際性を前提として、作品という具体物を周縁地にまで物理的に運搬し、作品に込められた理念を波及させる「媒介者としての組織」の実態を解き明かすことを目的としている。具体的には「アート・クラブ」という、国内外で本格的に考究されてこなかった「国際組織」について文献調査を進め、この美術団体が「芸術のプラットホーム」を準備したことを複数の観点から分析するものである。 2022年度は前年度に引き続き、本研究のメンバーの所属先にてアクセス可能な図書館や文書館で文献調査に専念した。関連雑誌のバックナンバーを精査し、事実を突き合わせて日本におけるアート・クラブの活動を確認していく作業である。この点については感染症に伴う入館や貸出制限があることを見越して、メンバーがそれぞれ自身の専門分野について知見を深め、その成果の公開を積極的に進めることを申し合わせた。 結果として島村が本研究とも関連する単著を刊行した。鯖江はアート・クラブの創設者であるエンリコ・プランポリーニについて査読論文を発表し、関連する研究会や研究プロジェクトのへの参加を通じて、日本戦後美術史への知見を一層深めることができた。このように各人の研究はおおむね実り多いものとなったが、国外調査が未実施であるなど、計画通り順調だったとは言えない。それについては2023年度に挽回したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前項でも述べたように、国外のアーカイブでの作業に遅延があることがその最大の理由である。海外の文献取り寄せにも大幅な遅れがあり、国外資料の読解そのものの機会が乏しい1年であった。 加えて、メンバーの一人が年度途中で産休に入ったため、当初の予定通りに研究を遂行できなかった。とはいえ資料や海外渡航については改善の兆しが見えつつあるので、後の項目で述べるように、2023年度は計画を柔軟に見直しつつ、メンバー間での定期的な打ち合わせを密にし、現地調査をできるだけ速やかに実施したい。
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今後の研究の推進方策 |
代表者の鯖江は各メンバーとの連携を維持しつつ、勤務校が所蔵する美術批評雑誌の精読を継続する。2023年度より書庫への入場が許可されたため、以前よりもいっそう迅速に調査ができる環境が整った。海外調査については今夏にローマ第三大学のパオロ・ダンジェロ教授の協力のもと、ローマ現代美術館(MARCO)でのアーカイブ調査を実施する予定である。 国内調査については鯖江・島村が担当する。鯖江は東中野にかつて存在したアートクラブの拠点であるレストラン「ミモザ」を中心とする人物関係から、日本におけるアートクラブの位置づけを再検討する。その成果を他国のアートクラブと結びつけた論文を発表する予定である。島村は、惜しくも中止となった展覧会「スーラ―ジュと森田子龍」(兵庫県立美術館)の担当学芸員に協力を仰ぎ、書とアートにまつわる国内の美術シーンについて調査するとともに、調査に基づく長谷川三郎論を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年11月より共同研究者の利根川由奈が産休に入ったため、差引額が生じた。利根川は1年で復職する意向を示しているので、次年度の後半に速やかに研究調査を実施し、予算を執行することを明言している。
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