研究課題/領域番号 |
21K00250
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
城地 茂 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00571283)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 和算 / 暦学 |
研究実績の概要 |
新たな暦書群と旧来からある暦との比較を文献上の記録から試みた。和算と暦学の双方向からの比較を加えつつ、初年度は人物調査を行った。日本科学史学会年会に参加し、申請者の仮説に対する意見交換を行う予定である。初年度は、日本国内でも調査ができなかったが、9月上旬に京都大学数理解析研究所で研究集会に参加予定である。 『楊輝算法』(楊輝、1275年)の中に、『乗除通変算法』と題する書籍を発見し、それが『楊輝算法』の全体像と同じものであることが分かったが、次年度(2022年度)に分析を進めたい。 中国数学書の中から『楊輝算法』を選んだのは、その内容に天文学に関するものがあったからである。韓国では羅逸星延世大学校名誉教授、台湾では劉伯文国立高雄科技大学教授の支援を受け調査を行う予定である。天文学の専門家を研究団に加え、より一層の研究に対する厚みを持たせる。とくに、台湾南部で回回暦法やその他の暦学の影響の有無を調査する上で、劉教授の存在は大きい。中国の周辺諸国(少数民族)でも暦の存在を考えたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際調査、国内調査はコロナ禍により渡航、遠方への出張が自粛されていたので、変わりに、関孝和の写本の原本を所蔵していた富山県・新湊市博物館の原稿を入手した。石黒信由(1760-1837)以下4代(信易(1789-1846)、信之(1811-1852)、信基(1836-1869))による和算、西洋数学、測量術、絵図作製、天文・暦学などに関する江戸時代後期の資料群の分からない部分の調査を行った。その際、『乗除通変算法』と題する20丁ほどの小冊子を入手したが、これは『楊輝算法』の一応全体を網羅したものであった。この写本の著者と考えられる和算家・戸板保佑(1708~1784)の人物調査を行った。 また、『新陰陽道叢書』においては、書評会「安倍晴明像の再生産と変容」(2022年3月24日(木))より開き活発な議論が展開された。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度は、4月から5月に二次文献資料の整理、分析を実施し、現地調査地点を策定する。これには、国内学会の参加を有機的に結び付ける。6月には、現地調査対象への連絡、アポイントメントを終え、江戸時代の版本研究を進める。また、可能なら複数の国内学会に参加し、発表する。 また、並行して3月には、国際学会へ摘要を投稿し、発表に備える。また、韓国ではネットで調査を実行する。韓国での『時憲暦』に対する遺漏がないようにする。国際学会参加の準備を進めるが、3年後に行われる国際学会で、『貞享暦』『宝暦暦』『寛政暦』『天保暦』における4暦の時代区分を発表する予定にしている。一般的には『天保暦』が「定気法」の初めてであるが、『寛政暦』からを時代区分の初めとすることも考えている。しかし、なお一層の研究が必要であり、『宝暦暦』からの可能性もある。これには、和算の18世紀における時代区分と連動していることに注意しなければならない。 次年度以降は、可能ならば、国立台湾大学を調査する予定である。さらに、日本各地での調査を進め、国会図書館、国立公文書館、日本学士院を調査する予定である。最終年度は、中間発表論文の投稿を進める。日本科学史学会年総会(東京)に参加発表する。まだ、未定であるが、全国和算研究会研究集会への参加も考慮している。京都大学数理解析研究所で数学史研究集会に参加し、発表は予定通り進める。最後に、文献の最終整理を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍であり、海外渡航・出張等を自粛のため、物品費を多用したため。
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