研究課題/領域番号 |
21K00265
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
下岡 友加 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 准教授 (30548813)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 編集者 / 女性記者 / 台湾愛国婦人 / 加納豊 / 加納ユカシ / 芦田均 / 雑誌メディア |
研究実績の概要 |
本研究課題に関わる令和3年度の研究実績は、研究論文1本、学会口頭発表2回、編著1冊である。まず、研究論文として「『台湾愛国婦人』編集者・加納豊の台湾以前/以後―『芦田均日記』を補助線に―」を公にした。この論文ではこれまで全くの不明であった、『台湾愛国婦人』編集者・加納豊(抱夢)履歴を柏原中学校時代の同窓・芦田均が残した日記や台湾総督府文書等を精査することで、可能な範囲で明らかにした。また、学会研究発表として「『台湾愛国婦人』編集者・加納豊の履歴再考―『芦田均日記』を補助線に―」、「海を渡った女性記者・加納ユカシに関する考察―『台湾愛国婦人』時代を中心に―」を行った。前者では兵庫県丹波市柏原町における現地調査を通じて明らかとなった、加納豊に関する履歴について報告した。後者では加納豊の関係者と考えられる女性作家・記者の加納ユカシの作品傾向について考察を行った。主に台湾時代の作品を中心に分析したが、台湾渡航以前と〈内地〉へ再び戻って以降の執筆活動についても判明している範囲で報告を行った。 その他、『『台湾愛国婦人』研究論集―〈帝国〉日本・女性・メディア―』(広島大学出版会、2022.3)を編集し、刊行した。本書の「はじめに」では『台湾愛国婦人』という媒体の基本的性格をまとめるとともに、これまでに確認されている雑誌各号の所蔵場所についても明示した。加えて、在台日本人作家である西岡英夫のお伽噺についても論究を行った。本書で下岡が担当した執筆内容は、本研究課題を掲げる以前の研究成果を元にしているが、本研究課題の礎となる資料と位置づけられる。他の研究者による研究成果とともに書籍としてまとめて公にできたことは、社会への還元の一つの方法として意義あることと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の遅延理由は、コロナ禍のため、勤務先規定により県外出張が不可能であったことによる。また、図書館、資料館側でも閉館の期間があり、予定の資料調査が果たせなかった。基本的な文献調査、並びに県外・国外での現地調査が行えないことは、本研究の推進において致命的な打撃であった。郵送で取り寄せ可能な文献や、研究者の所属機関内の文献、並びにこれまでの研究成果を踏まえるかたちで、口頭発表や論文執筆を可能な範囲で遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は次の1~5の課題を遂行する予定である。 1 2021年度に学会口頭発表を行った、女性記者・作家である加納ユカシの自己表象に関する論文を完成し、公にする。 2 加納豊と加納ユカシに関する履歴の補遺を、丹波市等での現地調査の成果や郷土資料等を踏まえて論文として完成し、公にする。 3 『台湾愛国婦人』に多くの寄稿がある女性作家・尾島菊子の自己表象について、彼女の故郷・富山での現地調査も踏まえて考察し、口頭発表の準備を行う。 4 『台湾愛国婦人』に多くの寄稿がある女性作家・国木田治子の自己表象について、夫である国木田独歩のテクストとの関わりも含めて考察を行い、口頭発表の準備を行う。 5 明治末~大正期の〈外地〉及び〈内地〉における複数の女性作家の自己表象の在り方、並びに女性の職業問題に関する文献・情報を収集する。女性作家の置かれた環境の総体的把握を行い、個別の例の考察における相対化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、予定通りの資料調査(県外出張)を実施することができなかったため、次年度使用が発生した。実施できなかった調査については今年度に代わりに行う計画である。
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