研究課題/領域番号 |
21K00269
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小野 泰央 中央大学, 文学部, 教授 (90280354)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 林羅山 / 随筆 / 宋明文論 / 文章達徳綱領 |
研究実績の概要 |
特に羅山が執拗に論じるのは、『枕草子』に依拠したその類聚章段を中心とした構造で、それは文や語句の連続、その連続の変化、さらには呼応についての指摘である。「此段、前後に常の人と書きつらねたる。是ひがごとなり。されど荘子に此体あるによりて、兼好が例の筆法なるにや。」(『野槌』二一一段 下之四)として「書き連ね」として、兼好の「筆法」であるとしている。また「此段、おほくあしき物と、よき物とを、言ひ連ねて、其中に、多くて見ぐるしからぬは、といふ。これ文法也。古文にも、此例あり。」(『野槌』第七二段 上之五)とする。『徒然草』第一九段で、四季を論じる中に、秋と冬の間に『源氏物語』『枕草子』の例を引くとするのも同様である。評価するくだりを受けるから、「つまらぬ」は、「つまらない」という意味ではなく、「滞らない」という意味である。文章としてのこの変化を「緩やかにして停滞しない」筆法であるとして評価する。『野槌』の指摘はつまり、『徒然草』が『枕草子』から学んだ「書き連ね」が基本で、その中に別の事柄があるとすることと、前後が「相応」するのとが加わる。この連続・関連に関する文体への指摘は、『野槌』が依拠したとされる『寿命院抄』には見られない。。それは、直接には藤原惺窩の『文章達徳綱領』に拠っている。『野槌』では、『文章達徳綱領』を経由して、『徒然草』の第二十四段・第二一一段を「書き連ね」としてそれを宋代『文則』の「目人之体」「列氏之体」に対応させ、第一四段・第一九段・第七二段を「中にいふ」としてそれを宋代『文則』『容斎随筆』『鶴林玉露』『荘子口義』および明代の『文章一貫』の「倒法」に対応させいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナなどのために文庫における調査が滞っている。さらに問題が多岐にわたっていて、ひとつひとつを解明するのに時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
網羅的に論じる部分と、詳細を丁寧に論じる部分を平行して行ってこうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナなどのため文庫の調査が思うように行えなかったため。
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