最終年度にあたる2023年度は、これまでの研究成果を発表するための単行本の執筆に力を入れた。2024年5月に、『出版帝国の戦争――不逞なものたちの文化史』(法政大学出版局)から刊行される予定であり、本研究費の成果であることも明記した。この本では、すでにデジタル化がかなり進んでいる韓国の新聞、雑誌関連のデータベースを使用し、分析を行っている。この本の韓国語訳の出版社も決まっており、本科研費の当初の計画通り、多言語による成果の公開に向けて準備を進めている。 Humanities というオンライン雑誌の特集: Modern Japanese Literature and the Media Industryに参加した。 また、昨年度に引き続き、シカゴ大学のKyeong-Hee Choi教授と共著を執筆しながら議論を深めている。2023年の夏休みは、一か月間シカゴ大学の招聘をうけ、同大学の図書館で故奥泉栄三郎の時代から集められた検閲関連の資料を調査するとともに、共同研究を行った。その成果は、2025年5月11日、ソウルの成均館大学で開かれた国際会議で共同報告を行う予定である。 韓国圓光大学の金ジェヨン教授とは、日中戦争期と冷戦時代の東アジアにおけるアメリカと日本の役割に関する二つの共同研究も順調に進んでいる。2023年度は対面での研究会が実現できなかったが、2024年4月20日に韓国の済州大学で中国、台湾、日本、韓国の共同研究メンバーが集まり、対面の国際会議を行った。それぞれの地域における書物と文化が、日本帝国の情報統制とどのような形で駆け引きしながら拡散していったのかについて議論した。その他、ASCJとAASにパネルで参加し、研究成果を発表した。
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