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2021 年度 実施状況報告書

教育装置としての『源氏物語』に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K00274
研究機関早稲田大学

研究代表者

新美 哲彦  早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90390492)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード源氏物語 / 豊臣秀吉 / 花屋玉栄
研究実績の概要

本研究は、教育装置としての『源氏物語』を眼目に置き、『源氏物語』の本文書写および古注釈と近世における『源氏物語』俗語訳を中心対象とし、中世から近世にかけて、『源氏物語』が教育装置としてどのような役割を果たしたかについての実態を具体的に考察するものである。
本年は、「Cultural Commerce Between Toyotomi Hideyoshi and Kaoku Gyokuei」と題して、16th International Conference of the European Association for Japanese Studiesにおいて、豊臣秀吉は、『源氏物語』を通じて、花屋玉栄という女性の比丘尼と、ちやあという女性と関わりを持つ。それは豊臣秀吉にとってどのような意味があったかについて考察し、発表した。概要は以下の通りである。
豊臣秀吉は、本(『天正記』)というメディアを意識的に利用し、創られた秀吉像を流布していた。その秀吉が『源氏物語』と関わった記録は案外少なく、しかもどちらも天正十五年に関わるものであった。『兼見卿記』に記載される豊臣秀吉依頼諸卿寄合書『源氏物語』は近衛家が主導しているようであるし、蜂須賀家旧蔵『源氏物語のおこり』も、近衛家の女性たちが関わっている。どちらも秀吉が猶子となった近衛家が関わっており、これら『源氏物語』も、近衛家の学問の継承者としての自分を演出し、権威向上の意図があったようである。秀吉が権力を掌握するために貴族たちを利用した一方で、貴族たちも秀吉と関わることで、自らの価値を向上させていく。秀吉が依頼した書写者の輪に入れなかった兼見は、自らの価値の向上する機会を逸したことであわてふためき、秀吉が書写をした『源氏物語のおこり』に関わった花屋玉栄は、その後、『源氏物語』の注釈書などを自分の名前が入った形で作成していく。つまり、兼見の価値は相対的に下がり、玉栄の価値は上がっているわけである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

戦国期という激動期における『源氏物語』および古典の享受についての調査が進んでおり、女性の教育装置としての『源氏物語』および古典享受など、課題に広がりが見えてきた状態である。

今後の研究の推進方策

今後は、2021年度EAJSでの発表をもとに、豊臣秀吉と『源氏物語』、および女性たちの古典享受の論の執筆を予定している。また、『源氏物語』という教育装置を作り上げた紫式部自身について、フィクションと歴史という観点から調査・考察を加えていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

欧州渡航を予定していたEAJSがオンライン開催となったため、余剰分が生じ、次年度に繰り越すことになった。余剰分については、次年度に書籍類の購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Cultural Commerce Between Toyotomi Hideyoshi and Kaoku Gyokuei2021

    • 著者名/発表者名
      新美哲彦
    • 学会等名
      16th International Conference of the European Association for Japanese Studies
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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