2022年度は、①学校教育関連・児童文学関連資料における課外読み物関連記事の調査・収集・分析、②『図書館書籍標準目録』における「少年書類」掲載書籍の調査・収集・分析に取り組んだ。 ①に関する成果としては、日本童話協会の機関誌『童話研究』において「童話批評」が生成していたこと、そのような「童話批評」を通して「童話」をめぐるジャンルのヒエラルキーが形成されていたことが明らかとなった。このような「童話」をめぐるジャンルのヒエラルキーの形成は、「童話」ひいては童話作家の社会的地位の正統化と連動していた。このような動向は、編纂物や目録に収録される作家・作品などに影響を及ぼす点で、課外読み物を選定する枠組みを形成したと考えられる。 ②に関する成果としては、①で検討した日本童話協会による編纂物、同協会を主導した蘆谷蘆村の著作物、「童話批評」の確立を目指した尾関岩二の著作物、口演童話の普及を試みた内山憲尚の著作物を中心に収集したことが挙げられる。ただし、感染予防の観点からバイトの雇用を断念したため、『図書館書籍標準目録』掲載の「少年書類」のデータベース化に取り組めておらず、十分な成果を挙げることができなかった。 2022年度の研究成果の公表については、以下の通り、1本の論文を作成し、1本の学会発表を行った。 ・目黒強「明治・大正期における『図書館雑誌』にみる課外読み物の選書論」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』16巻1号、2022年。 ・目黒強「『童話研究』における「童話」の卓越化」日本児童文学学会第61回研究大会口頭発表(宮城教育大学、2022年11月20日)。
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