2023年度は、学校教育関連資料おける課外読み物関連記事の調査・収集・分析と『図書館書籍標準目録』における「少年書類」掲載書籍の調査・収集・分析に取り組んだ。 ①については、国語科教育の最初期の雑誌である『国語教育』を分析した結果、以下の知見を得た。一つ目の知見としては、同誌の主幹であった保科孝一に代表される課外読み物論のもとでは、副読本という社会的地位を付与することで教育的価値が認められた課外読み物を正統化したが、通俗読み物のみならず、芸術的児童文学・児童文化までをも排除することで課外読み物を分断していた点が挙げられる。二つ目の知見としては、保科とは相容れない記事が掲載されるなど、課外読み物の捉え方には振幅が認められた点が挙げられる。その振幅は、副読本の国定化論から子ども本位の副読本論にまで及んでいた。主義主張の異なる記事の掲載を通して副読本としての課外読み物をめぐる論点を可視化することにより、『国語教育』は課外読み物観の形成に寄与していたことが明らかとなった。 ②については、「少年書類」掲載件数の推移や作家・作品等の傾向の把握を試みた。その結果、大正半ばから「少年書類」掲載件数が急増していたこと、学校劇禁止令などにより統制の対象となっていた児童劇(学校劇・対話)の脚本や『国語教育』などで議論されていた副読本が掲載されているなど、「少年書類」の認定基準は画一的ではなく、ある程度、当時の児童文学・児童文化状況を包括していたことが示唆された。 2023年度の研究成果については、目黒強「保科孝一主幹『国語教育』における課外読み物論の検討」日本児童文学学会第62回研究大会(2023年11月18日、於・武蔵野大学)と目黒強「大正期における副読本としての課外読み物論-『国語教育』を事例として-」『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』17巻1号(投稿中)が挙げられる。
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