研究の初年度に当たる本年は、綾足の俳諧・片歌・和歌(短歌・長歌)と物語・絵画の関係について研究を進め、次のような成果を得た。 1.綾足の自画賛を検討し、賛として書き込まれている俳諧・片歌・和歌と絵の関係を考察した。当然のことではあるが、賛として片歌唱道以前の俳諧の発句が記されている画は、人物や猫、象などの動物が描かれ、滑稽・飄逸な味わいがあるものも少なくない。それが片歌の時代になると、描かれるのは水鳥や苫船など、漢画の題材にもなり得るような伝統的な題材が多くなり、滑稽味もなくなってくる。 2.俳画における画と賛句の関係であるが、もちろん画賛そのものの作成手順としては、画が描かれるのと、句が書き付けられるのは、原則として同時である。しかし、その句自体は以前に詠まれた旧作であることが多いことが、画賛の署名(俳号)等から推測される。 3.綾足自画と推測される『本朝水滸伝』の挿絵と本文の関係は、ある意味では、自画賛における画と賛の関係と類似している。俳画において、賛句が単なる画の説明になってしまうことを避けるため、画は賛句と微妙な点で異なるように描かれることが多いが、『本朝水滸伝』の挿絵にも、同様の意識が感じられる。 4.片歌唱道以前の俳諧の歳旦帳には、綾足自画の挿絵があるものが少なくないが、 これは発句を賛とした自画賛の画と同じ意識で描かれている。もっとも歳旦帳という制約のもとで、必然的に歳末・新年の景物が主となってしまうため、画賛ほどには画がバラエティに富んでいず、また滑稽・飄逸身もやや薄くなっている。
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